「友達はいるわ、ばか」
「じゃあそいつ等と会って喋ればいーじゃん」
「そういう意味じゃないでしょうが」
「じゃあどういう意味?」
「吾一は私の友達枠には、はなから入ってないってこと」
「え!何それひでえ!超ショック!だったら俺、ずっと沙里の何だったんだよ!」
「だからそれは──!」

 好きな人!
 ……って、それが言えない。

 今度は吾一に対してではなく、意気地なしの自分に対する溜め息が抜けていく。

 見上げた夜空で瞬く星々。引っ越しなど存在しないあの世界の一部になって、吾一の隣で永遠に輝いていたい。

「それは?」

 幼子のようにきょとんとした(まなこ)を私に向けて、首を傾けてくる吾一。

「ねえ沙里。それは、何?」

 かっこよくて可愛くて、くすぐられる乙女心。万が一これが計算だとしたら、もう吾一は芸能界に入った方がいいと思う。

「それは……」
「うん」
「……」
「何だよ、もったいぶんなよ」
「そ、それは」

 それは、と言うか、私はあなたが。

「好き」

 ドン、と花火が弾けた気がした。去年の夏、勇気を出して誘った花火大会。きらきら落ちてくる最後の火の粉を目に、結局想いを伝えられずに悔しく思ったあの日が脳裏をよぎった。

「吾一が好き。ずっとずっと、好きだったの。私は吾一と付き合いたい」

 けど、今日は違う。だって今宵を逃したら、吾一は遠くに行ってしまう。また明日、が言えないところ。バイバイ、って手を振れないところ。