《ニーズホッグもスコルもハティも撃墜したぜ。どうするんだ?》
ソールが対峙するフレスヴェルグに通信を入れた。すぐにロキから返信がくる。
《アルカディアの2機だって戦闘不能だろう? おあいこさ》
それにしても、とロキは続けた。
《かつての仲間たちが死んでもまったく動じない。お前は人でなしか?》
《お前に言われる筋合いはねえよ》
吐き捨てた瞬間、ソールはフェニックスとケツァルコアトルを操り攻撃を仕掛けた。フェニックスのテイルブレードショットが弧を描く軌道で、ケツァルコアトルの牙がらせん状にフレスヴェルグに迫る。
《おっと!》
回避すると同時にブリザードと火炎放射のようなものを同時に発射して反撃する。正確には、空気を極限まで凍り付かせたり、あるいは灼熱にまで熱を与えたりしたものだ。アルティメット・ブリザードとアルティメット・バーンと呼ばれるこの攻撃は、シバルバーのカブラカンとシパクナーを合わせたのである。フェニックスとケツァルコアトルは回避した。
攻撃しては回避、回避しては攻撃を繰り返す。しかし、埒が開かない。
(…やはりこいつは別格だ)
ソールの中では、フレスヴェルグは最強クラスの機体だ。そのためグリフォンをぶつけた方がよいと思っていた。しかしいざ戦闘開始となるとフレスヴェルグはグリフォンを避けてこちらに来た。作戦は読まれていたようだ。
「仕方ない。あれを使うか」
ソールは、コックピットの青いボタンを押した。次の瞬間、フェニックスが光り始めた。
「何だ?」
フェニックスが急に光ったので、ロキは不審に思った。
(あの男のことだから、油断できないな)
突然、フェニックスとケツァルコアトルが突進してきた。しかし、フレスヴェルグは難なくかわす。
《おいおい、万策尽きて特攻か?》
ロキはソールをあざ笑う。しかし次の瞬間、ロキの脳裏に忌まわしい記憶がよみがえった。
――ロキ。
恋人が死んだあの日の記憶だった。目の前には戦っている現実が見えるのに、途切れ途切れに過去の記憶が見えるのだ。
「何だ、これは……」
ロキの体がガタガタ震える。あの日のことはもはやトラウマとなっているほどだ。思わず通信に怒鳴った。
《ソール、貴様いったい何をした!!》
いつも飄々としていて余裕綽々だったロキらしからぬ声だ。
《カウィール・シナプス装置の応用さ》
ソールは淡々と答えた。脳の発火作用を人的に操作するこのシステムは、当初ケツァルコアトルに組み込まれた。イシュタムが自らをサイコパスにするために開発したが、ソールが使うとしまい込んだ記憶を呼び起こす機能があると判明した。この機能を応用して、オーディンの記憶を盗み出してグールヴェイグの思惑を見破ったのだ。
そして今、さらなる進化を遂げてロキに襲いかかっている。
《そんなに広くないが、戦闘空域に電磁波が飛び交う磁場のようなものをつくって、そこにいる人間の脳内の発火を乱すようにした。脳の奥にある忌まわしい記憶を引き出したり、精神を錯乱したりするような作用が出ることを目指したんだよ》
《貴様……》
ロキは歯ぎしりした。まさかここまでの技術を駆使することができるとは……!!
《安心しな。お前だけじゃなく使った俺も同様に記憶がよみがえる。いわば諸刃の剣だ。どっちが先につぶれるか勝負しようぜ!》
こいつ正気じゃない。空戦時に忌まわしい記憶を見せられながら戦うなんて……!
それでもロキは操縦桿を握り、フェニックスに向けてブリザードを発射した。直撃してフェニックスの一部が破損したが、すぐに修復する。
「しまった、こいつは自己修復できるんだ……!!」
ロキの顔に焦りがにじみ始めた。
ソールが対峙するフレスヴェルグに通信を入れた。すぐにロキから返信がくる。
《アルカディアの2機だって戦闘不能だろう? おあいこさ》
それにしても、とロキは続けた。
《かつての仲間たちが死んでもまったく動じない。お前は人でなしか?》
《お前に言われる筋合いはねえよ》
吐き捨てた瞬間、ソールはフェニックスとケツァルコアトルを操り攻撃を仕掛けた。フェニックスのテイルブレードショットが弧を描く軌道で、ケツァルコアトルの牙がらせん状にフレスヴェルグに迫る。
《おっと!》
回避すると同時にブリザードと火炎放射のようなものを同時に発射して反撃する。正確には、空気を極限まで凍り付かせたり、あるいは灼熱にまで熱を与えたりしたものだ。アルティメット・ブリザードとアルティメット・バーンと呼ばれるこの攻撃は、シバルバーのカブラカンとシパクナーを合わせたのである。フェニックスとケツァルコアトルは回避した。
攻撃しては回避、回避しては攻撃を繰り返す。しかし、埒が開かない。
(…やはりこいつは別格だ)
ソールの中では、フレスヴェルグは最強クラスの機体だ。そのためグリフォンをぶつけた方がよいと思っていた。しかしいざ戦闘開始となるとフレスヴェルグはグリフォンを避けてこちらに来た。作戦は読まれていたようだ。
「仕方ない。あれを使うか」
ソールは、コックピットの青いボタンを押した。次の瞬間、フェニックスが光り始めた。
「何だ?」
フェニックスが急に光ったので、ロキは不審に思った。
(あの男のことだから、油断できないな)
突然、フェニックスとケツァルコアトルが突進してきた。しかし、フレスヴェルグは難なくかわす。
《おいおい、万策尽きて特攻か?》
ロキはソールをあざ笑う。しかし次の瞬間、ロキの脳裏に忌まわしい記憶がよみがえった。
――ロキ。
恋人が死んだあの日の記憶だった。目の前には戦っている現実が見えるのに、途切れ途切れに過去の記憶が見えるのだ。
「何だ、これは……」
ロキの体がガタガタ震える。あの日のことはもはやトラウマとなっているほどだ。思わず通信に怒鳴った。
《ソール、貴様いったい何をした!!》
いつも飄々としていて余裕綽々だったロキらしからぬ声だ。
《カウィール・シナプス装置の応用さ》
ソールは淡々と答えた。脳の発火作用を人的に操作するこのシステムは、当初ケツァルコアトルに組み込まれた。イシュタムが自らをサイコパスにするために開発したが、ソールが使うとしまい込んだ記憶を呼び起こす機能があると判明した。この機能を応用して、オーディンの記憶を盗み出してグールヴェイグの思惑を見破ったのだ。
そして今、さらなる進化を遂げてロキに襲いかかっている。
《そんなに広くないが、戦闘空域に電磁波が飛び交う磁場のようなものをつくって、そこにいる人間の脳内の発火を乱すようにした。脳の奥にある忌まわしい記憶を引き出したり、精神を錯乱したりするような作用が出ることを目指したんだよ》
《貴様……》
ロキは歯ぎしりした。まさかここまでの技術を駆使することができるとは……!!
《安心しな。お前だけじゃなく使った俺も同様に記憶がよみがえる。いわば諸刃の剣だ。どっちが先につぶれるか勝負しようぜ!》
こいつ正気じゃない。空戦時に忌まわしい記憶を見せられながら戦うなんて……!
それでもロキは操縦桿を握り、フェニックスに向けてブリザードを発射した。直撃してフェニックスの一部が破損したが、すぐに修復する。
「しまった、こいつは自己修復できるんだ……!!」
ロキの顔に焦りがにじみ始めた。