グリフォンはケラウノス光線を発射した。しかしニーズホッグに向かってではなく、斜め上に向けてだ。
「どこを狙っている?」
 ヨルムンガンドは首をかしげた。しかし次の瞬間、光線が光の壁に当たり、斜めに反射するかのように進路を変えた。その光線がニーズホッグに向かっていく。
「!!」
 ブリザードを放とうとしたが間に合わない。とっさにかわした。が、間に合わず足に被弾した。さらに光線はギュン、ギュン、ギュンと跳ね返り、回りにいたラタトスク・ボールを破壊する。
「こいつ…!」
 ヨルムンガンドは歯ぎしりした。以前戦ったときはこんな武器は見せなかったはずだ。ソールが改造したのか……!
《逃げようったって無駄だぜ。このケラウノスウォールは、20分間は消えねえんだ。それまで攻撃を避けるしか、助かる道はねえぜ!!》
 グリフォンはどんどん光線を発射する。次々とラタトスク・ボールが破壊されていく。しかし、光線はグリフォン自身にも跳ね返ってきた。
「おっと!」
 紙一重で避けた。
《こんなふうに、自分や味方にも跳ね返ってくるんでな。だから他のスレイプニルを下がらせたのさ》
 グリフォンの攻撃はやまない。ラタトスク・ボールのほとんどを破壊した。
《これで終わりだ!》
 極大の光線を発射した。壁に跳ね返り、ニーズホッグに向かっていく。しかし、ニーズホッグはブリザードを円状に吐き、氷のバリアを作った。
「!?」
《お前にできるようなこと、俺にもできる》
 氷のような冷たい声だ。肝心の攻撃が届かないのではどうしようもない。
(まずい、そろそろケラウノスウォールの効果が切れる……)
 この壁は、光線の燃料をかなり消費する。もう一度作ったら、ニーズホッグを撃墜する燃料はなくなるだろう。
 すると、トールから無線が入った。
《アーレス殿。ここは私が特攻する!》
 アーレスは耳を疑った。特攻だと!?
《何をする気だ、トール殿!!》
《ニーズホッグを戦闘不能にする、その隙に攻撃しろ!!》
 トールの駆るスレイプニルがニーズホッグに突っ込んでいった。ブリザードを浴びても歩を緩めない。
《あとは頼むぞ!!》
 そう叫びながらニーズホッグの横っ腹に接触し、抱えていたミョルニールを無理矢理投下して誘爆した。すると、直撃したニーズホッグは腹をえぐられてバランスを崩す。同時にトールのスレイプニルも炎上して爆発した。
「くそっ!!」
 トールが作ってくれたチャンスだ! 無駄にはしねえ!!
 アーレスはフルチャージで光線を発射した。光線が直撃したニーズホッグは、虚空で木っ端みじんに爆発した。