2機のうち1機――赤味がかかった金色の機体が高熱のビームを発射した。それを避けペガサスが光線で迎撃する。するとその機体はオレンジ色の同心円状の光線を発し、光線のエネルギーを吸収してしまった。
「何!?」
〈ふははは、驚いたか! この無人戦闘機シパクナーは、相手の熱エネルギーを吸収して自分のものにできるのだ!〉
 耳障りな甲高い声が響いた。
「フン・カメーか」
〈ならばこっちだ!〉
 ペガサスはもう一機――青味のある銀の機体に向け光線を発射した。今度は、その光線が凍らされるように固まってしまった。
「何だありゃ!?」
〈ふっ。こちらのカブラカンは、敵の熱エネルギーを凍らせるのさ」
 ヴクブ・カメーの冷ややかな声だ。
 そして今度は、シパクナーが灼熱のビーム放射を、カブラカンが冷却するビーム光線を発射した。ビルの一画に当たると、灼熱ビームはその部分を蒸発させ、冷却ビームは瞬間冷凍された後に粉々になった。
「何だ、あれは!?」
〈蒸発と瞬間冷凍かよ!〉
 冗談ではない。あんなものが当たったらフェニックスですら秒殺である。
〈ソール、何かいい手はないのか!?〉
「そんな簡単に言うなよ!!」
 必死に避けながら怒鳴り合う。
〈そもそもこっちの攻撃が無力化できる相手なんて、どうやって撃墜すればいいんだ!!〉
 するとソールははっとした。
「ペルセウス! 中央研究所に行くぞ!!」
〈は?〉
「あいつらはパイロットじゃない! あの機体には乗っていないはずだ!」
 自分の手が汚れたり自身が危険になったりするのを嫌うような連中だ。おそらく遠隔操作をしている。
〈よし!〉
 そうと決まると、フェニックスとペガサスは旋回して中央研究所に向かった。当然、シパクナーとカブラカン、ケツァルコアトルも追いかけてきた。

 中央研究所の上空に差しかかった。が、新たな問題が浮上した。
〈ソール、シパクナーとカブラカンを操作する部屋はどこだ?〉
「どこって……」
 最上階か? それとも地下だろうか?
「まとめて吹き飛ばすってのは・・・だめだよな?」
 ソールが一応聞いてみる。
〈お前な、非戦闘員を巻き添えにできるわけないだろう〉
 ペルセウスににべもなく突っぱねられた。ただでさえアルカディアの戦闘機を使って国際問題になりかねないのに非戦闘員である研究員を一緒に殺害するなどもってのほかだ。
 そうこうしているうちに3機が追いつこうとしていた。
〈おいおい、どうするんだよ!!〉
「そうだ、ペルセウス、建物の頂上にある突端だけを破壊してくれ!!」
〈は?〉
「いいから! 俺は周りの電線を切る!」
 ペガサスはハルペー光線で研究所の最上階の突端を攻撃し、フェニックスはテイルブレードショットで研究所の周囲にある電線を切った。
 すると、猛スピードで向かってきたシパクナーとカブラカンの動きが見る見る遅くなり空中で停止した。
〈どうなっているんだ?〉
「やっぱりな。あの手のものは電波で動いているんだよ」
 現代でいうラジコンやドローンの要領だ。電波を飛ばしてコントロールしているということは無線や有線を断ってしまえば動かなくなるというわけだ。
「フン・カメーたちの怒りの顔が思い浮かぶな」
 してやったりのソール。どこまでもつめの甘いやつらだ。
〈ソール! 避けろ!!〉
 突然、ペルセウスが怒鳴った。ケツァルコアトルが突っ込んできたのだ。
「うわっ!」
 2機とも回避した。が、滞空していたシパクナーとカブラカンはケツァルコアトルの牙に切り裂かれ、地上に落下した。
「しまった、あいつを忘れていた!」
〈ソール、あれも何とかしてくれ!!〉
 そうは言っても考える余裕がない。何しろスピードが桁違いなのだ。
「イシュタム、聞こえるか!?」
 一応無線で怒鳴ってみるものの返事がない。脳をサイコパス状態にした上に、機体もかなりの性能だ。パイロットでないイシュタムでも操れるほど高度なオートパイロット機能なのか。