ペルセウスとアルテミスはシバルバー第一空港に到着後、すぐにレンタカーを借りて行動を開始した。
「大都会だね、シバルバーって」
アルテミスが感心したように呟いた。
「アルテミスは初めて来たんだったな。いろいろなものが自動化された都市なんだよ」
ソールはシバルバーの最先端技術を学ぶために研修に向かったのだ。それがまさかこんなことになるとは……。
「じゃあ、ソール奪還のための……」
と言いかけてペルセウスは言葉を切り、突然車を停めて運転席下を探り始めた。
「何、どうしたの?」
「あった」
何かというと黒い小型の機械だ。コードが車の下まで伸びていることからどうやら車体と一体になっているらしい。
ペルセウスはメモに「盗聴器だ」と書いた。
「え!?」
声をあげるアルテミスを睨み「しっ」と人差し指を口に当てた。以後、メモでやりとりがされた。
―盗聴器だけじゃない。恐らく、車内のどこかに監視カメラが隠されている。犯罪者がレンタカーを借りたときの証拠になるように仕組まれているのだろう。
―どうするの、これから?
不安げなアルテミスをよそにペルセウスは自信に満ちた顔で筆を走らせた。
―ソールが研究所から脱出するとして、空港もしくは海際までの動線を確保する。合流次第、機体に乗り込んで脱出する。
その最後の一行に「緊急事態もありうる」と加えた。アルテミスはそれで「交戦もありうる」と解釈した。
「シキリパットとクマチュキックの反応が消えました。どうやら撃破されたようです」
「なんだって!?」
フン・カメーの荒々しい声が部屋にこだました。
「思ったよりやるようだね」
ヴクブ・カメーは相変わらず冷笑を浮かべている。
「何のんきにかまえているんだよ! せっかく開発したロボットがやられたんだぞ!」
弟に詰め寄るフン・カメー。しかし、ヴクブ・カメーはさらに口をゆがませた。
「何言っているんだい、兄さん。シキリパットとクマチュキックに弱点があるとこれではっきりした。大量生産したところで使い物にならなかったとわかってよかったじゃないか」
「そりゃそうだが……」
「まあ、地獄の番人はあと8体あるから大船にでも乗っておこうよ」
「ふーん、犯罪者捜索兼抹殺ロボットねえ」
ソールは壁に背を向けながら言った。あの2体と交戦したことで居場所はばれてしまったので開き直って廊下を歩くことにしたのだ。
「犯罪者と一緒にされるとはつくづく手厚い扱いだな」
皮肉たっぷりに呟きながらソールはコンピュータの画面をのぞいた。
「おお、ありがたいことに仲間の救援が来てくれるようだ」
「ほんと?」
「ただし、研究所からは自力で脱出しろと」
研究所自体が厳戒態勢になっているため部外者が入れないらしい。
「人間の追っ手が来ないところを見ると、その地獄の番人とやらを刺客に差し向けるんだろうな」
そのとき風が吹いた。
「ん? 密閉されたはずの研究所に風が吹くとは?」
「ソール、あそこ!!」
イシュタムが指さした先には宙に浮く2体のロボットがいた。扇風機と水道の蛇口のようなデザインをしている。
「アハルプーとアハルガナー…こいつら確か」
扇風機はファンを回して風を水道は蛇口に水蒸気を集めて水を精製し始めた。
「水と風を起こすロボットよ!!」
小型ながらも強烈な雨の竜巻がソールたちに襲いかかった。
「うおっ!」
何とかよけると竜巻は壁に当たり激しく四散した。飛び散った水しぶきの音がすさまじい。
「風と水か…」
ソールはあれこれと打開策を考え始めた。風は個体や液体を吹き飛ばすが風そのものには殺傷力はない。台風や竜巻は風にあおられた物や水が被害をもたらし、砂嵐も風に巻き上げられた砂が目に入ったとき目を痛めるのだ。
水は少量であれば問題ないが大量なら重さも増してぺしゃんこにされる。あるいは凍らせれば刃物になりうるし、水蒸気になれば視界を遮る幕となる。
(先に水を封じるか)
そう判断するやソールは近くにあった電気のコンセントを強引に壊した。
「ちょっと、何しているの!?」
イシュタムが叫ぶのも構わずそこから導火線を引っこ抜くと、それをまるめて蛇口ロボ…アハルプーに投げつけた。
ちょうど水を発射した瞬間、その導火線の塊が命中してショートを起こして爆発した。
「よしっ!!」
さらにソールはアハルプーの残骸に駆け寄って蹴り飛ばし、相方のアハルガナーにぶつけた。するとショートの巻き添えをくらってこれまた爆発を起こした。
「すご…」
イシュタムは呆然とした。
「どんな技術でも長所と短所がある。これもアポロンから教わったことだ」
「大都会だね、シバルバーって」
アルテミスが感心したように呟いた。
「アルテミスは初めて来たんだったな。いろいろなものが自動化された都市なんだよ」
ソールはシバルバーの最先端技術を学ぶために研修に向かったのだ。それがまさかこんなことになるとは……。
「じゃあ、ソール奪還のための……」
と言いかけてペルセウスは言葉を切り、突然車を停めて運転席下を探り始めた。
「何、どうしたの?」
「あった」
何かというと黒い小型の機械だ。コードが車の下まで伸びていることからどうやら車体と一体になっているらしい。
ペルセウスはメモに「盗聴器だ」と書いた。
「え!?」
声をあげるアルテミスを睨み「しっ」と人差し指を口に当てた。以後、メモでやりとりがされた。
―盗聴器だけじゃない。恐らく、車内のどこかに監視カメラが隠されている。犯罪者がレンタカーを借りたときの証拠になるように仕組まれているのだろう。
―どうするの、これから?
不安げなアルテミスをよそにペルセウスは自信に満ちた顔で筆を走らせた。
―ソールが研究所から脱出するとして、空港もしくは海際までの動線を確保する。合流次第、機体に乗り込んで脱出する。
その最後の一行に「緊急事態もありうる」と加えた。アルテミスはそれで「交戦もありうる」と解釈した。
「シキリパットとクマチュキックの反応が消えました。どうやら撃破されたようです」
「なんだって!?」
フン・カメーの荒々しい声が部屋にこだました。
「思ったよりやるようだね」
ヴクブ・カメーは相変わらず冷笑を浮かべている。
「何のんきにかまえているんだよ! せっかく開発したロボットがやられたんだぞ!」
弟に詰め寄るフン・カメー。しかし、ヴクブ・カメーはさらに口をゆがませた。
「何言っているんだい、兄さん。シキリパットとクマチュキックに弱点があるとこれではっきりした。大量生産したところで使い物にならなかったとわかってよかったじゃないか」
「そりゃそうだが……」
「まあ、地獄の番人はあと8体あるから大船にでも乗っておこうよ」
「ふーん、犯罪者捜索兼抹殺ロボットねえ」
ソールは壁に背を向けながら言った。あの2体と交戦したことで居場所はばれてしまったので開き直って廊下を歩くことにしたのだ。
「犯罪者と一緒にされるとはつくづく手厚い扱いだな」
皮肉たっぷりに呟きながらソールはコンピュータの画面をのぞいた。
「おお、ありがたいことに仲間の救援が来てくれるようだ」
「ほんと?」
「ただし、研究所からは自力で脱出しろと」
研究所自体が厳戒態勢になっているため部外者が入れないらしい。
「人間の追っ手が来ないところを見ると、その地獄の番人とやらを刺客に差し向けるんだろうな」
そのとき風が吹いた。
「ん? 密閉されたはずの研究所に風が吹くとは?」
「ソール、あそこ!!」
イシュタムが指さした先には宙に浮く2体のロボットがいた。扇風機と水道の蛇口のようなデザインをしている。
「アハルプーとアハルガナー…こいつら確か」
扇風機はファンを回して風を水道は蛇口に水蒸気を集めて水を精製し始めた。
「水と風を起こすロボットよ!!」
小型ながらも強烈な雨の竜巻がソールたちに襲いかかった。
「うおっ!」
何とかよけると竜巻は壁に当たり激しく四散した。飛び散った水しぶきの音がすさまじい。
「風と水か…」
ソールはあれこれと打開策を考え始めた。風は個体や液体を吹き飛ばすが風そのものには殺傷力はない。台風や竜巻は風にあおられた物や水が被害をもたらし、砂嵐も風に巻き上げられた砂が目に入ったとき目を痛めるのだ。
水は少量であれば問題ないが大量なら重さも増してぺしゃんこにされる。あるいは凍らせれば刃物になりうるし、水蒸気になれば視界を遮る幕となる。
(先に水を封じるか)
そう判断するやソールは近くにあった電気のコンセントを強引に壊した。
「ちょっと、何しているの!?」
イシュタムが叫ぶのも構わずそこから導火線を引っこ抜くと、それをまるめて蛇口ロボ…アハルプーに投げつけた。
ちょうど水を発射した瞬間、その導火線の塊が命中してショートを起こして爆発した。
「よしっ!!」
さらにソールはアハルプーの残骸に駆け寄って蹴り飛ばし、相方のアハルガナーにぶつけた。するとショートの巻き添えをくらってこれまた爆発を起こした。
「すご…」
イシュタムは呆然とした。
「どんな技術でも長所と短所がある。これもアポロンから教わったことだ」