「おかしい」
「何がだ?」
ペルセウスがアルカディア軍の詰め所でポセイドンに言った。
「もう1週間だ」
ソールからの定期メールが途切れて1週間が経つ。出立するとき、短くていいから定期的に連絡しろと言った。その言葉通り、短くて愛想のかけらもないメールが3日に1度は送られてきた。
それが途絶えて1週間。何かあったのだろう。
「もともと筆無精なんでしょう? だったらめんどくさくなったとかは?」
アルテミスが口を挟んだ。ちょうど海上の護衛が終わり、カリストーとシフトを交代して戻ってきたばかりだ。
「いや、あいつは自分で習慣化したり決めたりしたことは愚直にやる性格だ。何かトラブルがあったに違いない」
「ペルセウス」
アーレスが部屋に入ってきた。
「一応ゼウスに報告したぜ」
「なんて?」
「放っておけってさ」
肩をすくめるアーレスを見ると、ボスは厄介払いができてせいせいするとでも思っているようだ。
「誰か迎えに行くか?」
ハーデスがペルセウスとアーレスを促した。
「ばか言えよ。一個人を軍人が迎えに行くなんてしたらあちらさんとの関係にひびが入るぞ」
現代でもそうだが、例えば紛争地域に戦場カメラマンが入って拘束されたからとしても軍を出すことはできないのが政治だ。下手に軍を動かしたら争いの火種になる。
「もう少し待つか。そうすれば行方不明者の捜索という名目ができるだろうから」
「それまでに万が一のことがあったら?」
「そのときはそのときだ、あきらめるしかないな」
そんな薄情なやりとりがアルカディアでされる数日前のこと。ソールはくの字に倒れた状態で目を覚ました。
「いってて……あれ、俺どうしたんだっけ」
冷たい石畳が生ぬるく、かなりの汗で濡れているからけっこうな時間倒れていたことが分かる。それにしても辺りが薄暗い。何とか目をこらすと家具などが揃っているから、どこかの部屋のようだ。
突然、シュッと扉が開いた。
「お目覚めのようね」
「誰だ!」
声の方に向いて身構えた。
「あなたの面倒を見るようヴクブ・カメーから言われたわ」
扉のところにいたのは自分とさほど歳の変わらない女性だった。
「おいおい、俺は客人だぜ。何で監禁するような真似を……」
立ち上がろうとしたら全身にしびれが走り、どさりと倒れた。
「感情を高ぶらせないほうがいい。君の首には脳の信号を感知するチョーカーが巻かれているからね」
女性の後ろからフン・カメーとヴクブ・カメーが現れた。頭で考えたことや感情を読み取り、よからぬことをしようとしたら電流を流すということか。
「……一体何の真似だ?」
息が絶え絶えになりながら毒づいた。と言ってもあらかた狙いは勘づいている。
「君のサンギルドシステムを我がシバルバーに取り入れようと思ってね」
軟禁して無理矢理に開発を手伝わせるという魂胆のようだ。
「やなこった」
するとまた電流が流れた。
「ぐわっ!」
「言っておくけど我々が任意に電流を流すこともできる。お忘れなく」
まあ、前向きに考えてくれたまえと言い捨てて2人は出て行った。
「あいつら……」
と怒りを覚えつつ感情を抑えた。また電流が流れるのはごめんだ。
「大丈夫?」
例の女性がタオルを出してくれた。
「ああ……ってあんた、あいつらの仲間じゃないのか?」
怪訝な顔でたずねる。
「実は私もあなたと同じように軟禁されているの」
「何がだ?」
ペルセウスがアルカディア軍の詰め所でポセイドンに言った。
「もう1週間だ」
ソールからの定期メールが途切れて1週間が経つ。出立するとき、短くていいから定期的に連絡しろと言った。その言葉通り、短くて愛想のかけらもないメールが3日に1度は送られてきた。
それが途絶えて1週間。何かあったのだろう。
「もともと筆無精なんでしょう? だったらめんどくさくなったとかは?」
アルテミスが口を挟んだ。ちょうど海上の護衛が終わり、カリストーとシフトを交代して戻ってきたばかりだ。
「いや、あいつは自分で習慣化したり決めたりしたことは愚直にやる性格だ。何かトラブルがあったに違いない」
「ペルセウス」
アーレスが部屋に入ってきた。
「一応ゼウスに報告したぜ」
「なんて?」
「放っておけってさ」
肩をすくめるアーレスを見ると、ボスは厄介払いができてせいせいするとでも思っているようだ。
「誰か迎えに行くか?」
ハーデスがペルセウスとアーレスを促した。
「ばか言えよ。一個人を軍人が迎えに行くなんてしたらあちらさんとの関係にひびが入るぞ」
現代でもそうだが、例えば紛争地域に戦場カメラマンが入って拘束されたからとしても軍を出すことはできないのが政治だ。下手に軍を動かしたら争いの火種になる。
「もう少し待つか。そうすれば行方不明者の捜索という名目ができるだろうから」
「それまでに万が一のことがあったら?」
「そのときはそのときだ、あきらめるしかないな」
そんな薄情なやりとりがアルカディアでされる数日前のこと。ソールはくの字に倒れた状態で目を覚ました。
「いってて……あれ、俺どうしたんだっけ」
冷たい石畳が生ぬるく、かなりの汗で濡れているからけっこうな時間倒れていたことが分かる。それにしても辺りが薄暗い。何とか目をこらすと家具などが揃っているから、どこかの部屋のようだ。
突然、シュッと扉が開いた。
「お目覚めのようね」
「誰だ!」
声の方に向いて身構えた。
「あなたの面倒を見るようヴクブ・カメーから言われたわ」
扉のところにいたのは自分とさほど歳の変わらない女性だった。
「おいおい、俺は客人だぜ。何で監禁するような真似を……」
立ち上がろうとしたら全身にしびれが走り、どさりと倒れた。
「感情を高ぶらせないほうがいい。君の首には脳の信号を感知するチョーカーが巻かれているからね」
女性の後ろからフン・カメーとヴクブ・カメーが現れた。頭で考えたことや感情を読み取り、よからぬことをしようとしたら電流を流すということか。
「……一体何の真似だ?」
息が絶え絶えになりながら毒づいた。と言ってもあらかた狙いは勘づいている。
「君のサンギルドシステムを我がシバルバーに取り入れようと思ってね」
軟禁して無理矢理に開発を手伝わせるという魂胆のようだ。
「やなこった」
するとまた電流が流れた。
「ぐわっ!」
「言っておくけど我々が任意に電流を流すこともできる。お忘れなく」
まあ、前向きに考えてくれたまえと言い捨てて2人は出て行った。
「あいつら……」
と怒りを覚えつつ感情を抑えた。また電流が流れるのはごめんだ。
「大丈夫?」
例の女性がタオルを出してくれた。
「ああ……ってあんた、あいつらの仲間じゃないのか?」
怪訝な顔でたずねる。
「実は私もあなたと同じように軟禁されているの」