「大変だ、陸地が…沈むぞ!!」
「助けて、誰か助けてくれえええええええ!!」
かつて、北大西洋上に栄華を極めながら1日で海底に沈んだ大地があった。後世では、さまざまな憶測を呼んだ伝説の大陸と呼ばれている。さて、その大地はどのようにして滅んだのか……。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ソール!」
ペガサスのコックピットにいたソールはアンドラの声の方に振り向いた。
「何しに来たんだ? 整備工場に」
「ごあいさつね、最近、顔を見せないから元気かなって気にかけてあげたんじゃないの」
「いや、俺が言いたいのはそういうことじゃなくて……」
ソールはアンドラのやや大きくなった腹を指さした。あの後、ペルセウスとアンドラはすぐ結婚して子供を授かった。今は妊娠8カ月である。
「身重のあんたにこの工場は毒だぜ」
工場内は暗くて通気性もよくない。加えて機械類が多くいつ倒れてくるかも分からないのだ。普通の人間でも体によくない上に危険なのに、妊婦となったらなおさらだ。
「ねえ、そう言えばさ、今度どこかに勉強に行くって聞いたわよ」
人の話を聞いていないなと思いつつ、ソールはコックピットから降りてアンドラに駆け寄った。
「勉強じゃなくて研究だ研究。北大西洋にあるシバルバーに行ってくる」
シバルバーとは北大西洋上にある島、およびそこにある国家の名称である。この大地は百年前、この世に存在していなかった。が、優れた科学技術により海を埋め立てて島にした。その結果、今で言うメキシコやグアテマラの地域にあったトゥランという国から膨大な数の人々が移住し、国家を形成したのだ。
「で、そんなところに何しに行くの?」
地中海の見えるテラスでアンドラはケーキをつつきながら尋ねた。あとからペルセウスとも合流し、3人でのんびりとランチを楽しんでいる。以前の激闘が嘘のようだ。
「シバルバーは最新のテクノロジーを使っている。サンギルドシステムをさらに改良するためには、今の技量じゃ限界があると思うんだ」
「本当に1人で行くのか?」
ペルセウスが眉をひそめながら言った。
「あのな、もう俺も子供じゃないんだ。海外だって1人で行けるさ」
ソールがにらみ付ける。アーレスもペルセウスも何かと子供扱いをしてくる。正直に言うとかなり不服だ。
「よく言うよ。この前だってペガサスをおもちゃみたいに勝手に改造しようとしやがって……」
「は? あんなの改造のうちに入らないだろ?」
ペルセウスは呆れた。勝手に改造とはペガサスの砲身を10本にしようとしたのだ。ソールにとっては、兵器だろうと身近な機械だろうとおもちゃのようなものなのだ。
「俺が言いたいのは、あのうさんくさいシバルバーに1人で行って無事に帰って来られるのかということだ」
「え? どういうこと?」
よく考えてみろ、とペルセウスは懸念していることをアンドラに話した。たった百年前、何もなかった海上に島を造ったのだ。科学技術が進んだとは言え、そんなことをやってのける国はシバルバーしか聞いたことがない。
しかも、何かしらの大量破壊兵器を秘密裏に開発しているという噂もある。裏が取れないが信憑性はかなり高いとアルカディアの首脳部でも話題になっているのだ。
「まあ、そんなことを心配しても仕方ないさ。何かあったら助けを呼ぶからよろしく」
状況次第では連絡ができないかもしれないぞと注意をしても右から左だろう。しかし、脳天気なソールの台詞はペルセウスの危惧をぬぐうには足りなかった。
そして――ペルセウスの危惧をはるかに上回る惨劇が起こることとなる……。
「助けて、誰か助けてくれえええええええ!!」
かつて、北大西洋上に栄華を極めながら1日で海底に沈んだ大地があった。後世では、さまざまな憶測を呼んだ伝説の大陸と呼ばれている。さて、その大地はどのようにして滅んだのか……。
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「ソール!」
ペガサスのコックピットにいたソールはアンドラの声の方に振り向いた。
「何しに来たんだ? 整備工場に」
「ごあいさつね、最近、顔を見せないから元気かなって気にかけてあげたんじゃないの」
「いや、俺が言いたいのはそういうことじゃなくて……」
ソールはアンドラのやや大きくなった腹を指さした。あの後、ペルセウスとアンドラはすぐ結婚して子供を授かった。今は妊娠8カ月である。
「身重のあんたにこの工場は毒だぜ」
工場内は暗くて通気性もよくない。加えて機械類が多くいつ倒れてくるかも分からないのだ。普通の人間でも体によくない上に危険なのに、妊婦となったらなおさらだ。
「ねえ、そう言えばさ、今度どこかに勉強に行くって聞いたわよ」
人の話を聞いていないなと思いつつ、ソールはコックピットから降りてアンドラに駆け寄った。
「勉強じゃなくて研究だ研究。北大西洋にあるシバルバーに行ってくる」
シバルバーとは北大西洋上にある島、およびそこにある国家の名称である。この大地は百年前、この世に存在していなかった。が、優れた科学技術により海を埋め立てて島にした。その結果、今で言うメキシコやグアテマラの地域にあったトゥランという国から膨大な数の人々が移住し、国家を形成したのだ。
「で、そんなところに何しに行くの?」
地中海の見えるテラスでアンドラはケーキをつつきながら尋ねた。あとからペルセウスとも合流し、3人でのんびりとランチを楽しんでいる。以前の激闘が嘘のようだ。
「シバルバーは最新のテクノロジーを使っている。サンギルドシステムをさらに改良するためには、今の技量じゃ限界があると思うんだ」
「本当に1人で行くのか?」
ペルセウスが眉をひそめながら言った。
「あのな、もう俺も子供じゃないんだ。海外だって1人で行けるさ」
ソールがにらみ付ける。アーレスもペルセウスも何かと子供扱いをしてくる。正直に言うとかなり不服だ。
「よく言うよ。この前だってペガサスをおもちゃみたいに勝手に改造しようとしやがって……」
「は? あんなの改造のうちに入らないだろ?」
ペルセウスは呆れた。勝手に改造とはペガサスの砲身を10本にしようとしたのだ。ソールにとっては、兵器だろうと身近な機械だろうとおもちゃのようなものなのだ。
「俺が言いたいのは、あのうさんくさいシバルバーに1人で行って無事に帰って来られるのかということだ」
「え? どういうこと?」
よく考えてみろ、とペルセウスは懸念していることをアンドラに話した。たった百年前、何もなかった海上に島を造ったのだ。科学技術が進んだとは言え、そんなことをやってのける国はシバルバーしか聞いたことがない。
しかも、何かしらの大量破壊兵器を秘密裏に開発しているという噂もある。裏が取れないが信憑性はかなり高いとアルカディアの首脳部でも話題になっているのだ。
「まあ、そんなことを心配しても仕方ないさ。何かあったら助けを呼ぶからよろしく」
状況次第では連絡ができないかもしれないぞと注意をしても右から左だろう。しかし、脳天気なソールの台詞はペルセウスの危惧をぬぐうには足りなかった。
そして――ペルセウスの危惧をはるかに上回る惨劇が起こることとなる……。