とりあえずソールはアルカディアからお咎めを受けることはなかった。が、それにはいくつかの条件があった。
 まず、破壊した兵器たち全ての修復を手伝うこと。それから、サンギルドシステムをアルカディアのために使うことだ。
 早速、アルカディアに住み込み整備兵として働くことになった。同時にサンギルドシステムの解析にも取りかかった。しかし、想像以上に複雑でなかなか解析が進まない。
 ある程度、解析が一段落したのは一カ月だった。

「ソール、どうだ?」
 ペルセウスが整備工場を訪ねてきた。ペガサスはとっくに修復され、彼はいつもの任務に戻っている。
 そしてその横にはアンドラもいた。ちなみにあの日からアンドラはペルセウスと一緒に住むようになった。そのうち結婚するのだろうか。
「いやあ、ありがとうペルセウス」
「は?」
 ソールは、ペルセウスの肩を叩きながら言った。
「あのまま、アンドラを動く棺桶に乗せたくはなかったからな」
「まだ言っているの?」
 むくれるアンドラ。ケートスは大破してもうこの世にはない。が、あれだけボロボロであそこまで戦ったのだからマシな方だろう。
「それにしてもさすがソールだな。もうほとんどの機体が修復されたんだろう?」
「ああ、あとはフェニックスだけだ」
 あごを向けながら、ソールは眉をひそめた。
「どうした?」
「実は……」
 フェニックスもほとんどが修復している。サンギルドシステムも正常に作動しつつある。が、ソールは決断を迫られているという。
 それは、今より少量のガイアの血でハイブリッド分のエネルギーをまかなえるというプログラムを見つけたのだ。アポロンの遺言の通り、サンギルドシステムは進化する。
「やったじゃない、お師匠さんの理想に一歩近づくのね」
「ただな、追加分のガイアの血が足せなくなるんだ」
「え?」
 仮にガイアの血がなくなったら、もうフェニックスは空を飛べない。
「それに踏み切れなくてな……」
「もう、ソールらしくないわ!」
 アンドラが叱咤する。
「今のままでいいんだったらアレクサンドリアにずっといたはずよ。でも、あなたはそれで終わろうとしなかったから、ここにいるんでしょう?」
 ……そうだ、アンドラの言う通りだ。彼女は、エネルギーを搾取される地から来たのだから改良に踏み切るべきと主張した。
「よし!」
 ソールはアンドラに後押しされ、フェニックスのコックピットに登った。
「見ていてくれ、今からその回路を切断する」
 ソールはコックピットから銅線を引っ張り出してはさみを当てた。

 ジャキンッ

 という音がするとフェニックスが光り出した。
「何だ?」
「生まれ変わるのさ、フェニックスが」
 しばらくすると光が収まった。

――アポロンの死から続く壮絶な戦いはこうして幕を閉じた。が、ソールたちは、これがこれから続く激闘の序章だとはこのとき知る由もなかった。