上昇し続けるフェニックスのコックピットの中でソールは頭を抱えていた。
「威勢よく啖呵を切ったが、どうするかな……」
 正直、勝算はゼロに等しい。これまでは付け焼き刃のチームプレーもあって何とか敵を退けてきたが、1対1ではまともに戦えない。
「アポロン…どうすればいい?」
 するとふとある考えが浮かんだ。
 今まで正規の軍人相手に立ち回れたのは、何故だ? 普通だったらとっくに撃墜されてあの世に行っているはずだ。
 フェニックスの機能のおかげか? 確かにサンギルドシステムのおかげで戦いで受けた損傷も瞬時に修復できた。あとコンピュータの中に敵の情報が入っていたのも大きい。でもそれだけでここまでやれたのか?
 自分が整備兵だったからというのが大きいのではないだろうか? 戦闘を専門にしないのでセオリー通りの戦いはしなかった。また、機体の性能をある程度把握していたから機体の一長一短を踏まえて戦った。
 このピンチでも、フェニックスの性能とグリフォンの性能から自分が勝つ方法を見出せるのではないか?
 その結論に到ったときソールは操縦桿を下に向け急降下し始めた。

「おいおい、今度は何だよ」
 グリフォンを操っていたアーレスが呆れた様子で呟いた。高度を上げて逃げ切ると思っていたフェニックスが、突然、降下を始めたのだ。
「まあ、スピードはグリフォンの方が上のようだから、逃げても無駄だな」
 アーレスとしては旧友を撃墜するのは不本意である。が、ここまで来たらそれもやむを得ないと考えていた。フェニックスは崖の隙間のような場所に逃げ込んだ。
「無茶しやがるなあ」
 グリフォンも追走する。こんな狭い谷間を飛ぶのは正規の軍人でも困難だろう。その証拠にフェニックスは翼端を岩に引っかけている。
 グリフォンはフェニックスにぐんぐん迫る。射程に入ると、アーレスは前方の敵機に照準を合わせた。
「せめて痛みのないように一瞬で消し飛ばしてやるか」
 エネルギーをため始めたその時――フェニックスの尾・テイルブレードの全てが後方に向けて発射された。同時にフェニックスが急に減速したのだ。
「!!」
 危ない!! と思った瞬間にはグリフォンはフェニックスとブレードに激突していた。その衝撃は高速道路の衝突事故くらいではすまない。両機はぐしゃぐしゃにつぶれ、もみくちゃになるように地上に落下していく。
 すると今度は、フェニックスが光り出して破損した部分を自己修復していく。ある程度まで修復するとグリフォンを離れて飛び去っていった。
「あの野郎、これが狙いだったのか!」
 アーレスは追走しようとしたが、操縦桿が言うことをきかない。そのまま谷底に落ちていった。