一方、グールヴェイグはロキの先導でカッパドキアの西端に着いた。
「ここに何の用があるんだ? ロキ」
「ここにある鉱石が必要なんだ。それをいただいていく」
ロキは乗組員数人にそれを取ってくるように命じた。乗組員たちは防護服のようなものを着込んで外に出た。
「何だか仰々しいわね」
アンドラも不審そうにつぶやいた。
「ここには、テュルフング鉱石が眠っているんだ」
「テュルフング鉱石?」
ソールも首を傾げた。聞いたことがあるようなないような……。
「このグールヴェイグの動力源だ。北欧では今、主流のエネルギーとして注目されている。ただ……」
ロキ曰く、テュルフング鉱石はその力が非常に大きいという。ガイアの血は燃やしたり爆発させたりして動力を得るが、この鉱石はその核部分を破壊することでエネルギーを生み出す――現代で言う核エネルギーだ。このテュルフングは、後世の北欧神話において、持ち主の邪悪な欲望を叶えつつも、最後には破滅させる魔剣として知られていく。
毒性が強く、少量でも爆発すれば都市一つを壊滅させ、人体にも悪影響を及ぼす危険なエネルギー源なので、乗組員に完全防備をさせた上で採りに向かわせたのだ。願いと破滅を同時にもたらす、魔剣・テュルフングの名にふさわしいエネルギーだった。
「なるべくなら危険な目には遭わせたくないが、採ってこなくては最終目的が達成できないからな」
ソールは冷や汗を流した。ガイアの血が温暖化や貧しい地域の搾取を助長している一方、そんな危険なエネルギーがあったとは……。しかも、グールヴェイグの目標に欠かせないだと。
(こいつらとも長くつき合うわけにはいかないかもな……)
最初にロキを見た時、うさんくさいと思っていたが、漠然とした不信感が確信に変わった。
やがて、補給が終わり進路をアルカディアに向けて発進した。
地中海に差しかかる前夜、ソールはフェニックスの整備をしていた。
恐らく、アルカディア軍は総力を結集してグールヴェイグを迎え撃ちにくるだろう。戦いの最中に整備はできないことが考えられる。念のため機体のメンテナンスをしておいた方が良い。
「それにしても……」
ソールは思うのだ。何故、アポロンはこれを開発したのか。サンギルドシステムが、ガイアの血を使わずに済む次世代のエネルギーというのは画期的だ。
しかし、それならサンギルドシステムをもっと普及させる活動を地道にすればよかったのではないか。何故、よりによって戦闘機を……?
「ん? 何だこれ?」
ソールは、操縦桿の右奥に置かれたあるものに気付いた。黒くて、現代でいうスマートフォンくらいの大きさである。
「パピルスメモリーか……」
パピルスとはこの時代の紙である。パピルスメモリーとは現代のCD-RやUSBのようなもので、この時代のデジタル記録メディアなのだ。
ソールは中を確認しようとフェニックスのタッチパネルに繋いでみた。すると、アポロンの映像が映し出された。
「アポロン……」
今は亡き師がそこにいた。そして、アルカディアに向けて何かを話し始めたのだ……。
――その映像を見たソールは、強く決意した。この映像を、必ずアルカディアに届けると――
「ここに何の用があるんだ? ロキ」
「ここにある鉱石が必要なんだ。それをいただいていく」
ロキは乗組員数人にそれを取ってくるように命じた。乗組員たちは防護服のようなものを着込んで外に出た。
「何だか仰々しいわね」
アンドラも不審そうにつぶやいた。
「ここには、テュルフング鉱石が眠っているんだ」
「テュルフング鉱石?」
ソールも首を傾げた。聞いたことがあるようなないような……。
「このグールヴェイグの動力源だ。北欧では今、主流のエネルギーとして注目されている。ただ……」
ロキ曰く、テュルフング鉱石はその力が非常に大きいという。ガイアの血は燃やしたり爆発させたりして動力を得るが、この鉱石はその核部分を破壊することでエネルギーを生み出す――現代で言う核エネルギーだ。このテュルフングは、後世の北欧神話において、持ち主の邪悪な欲望を叶えつつも、最後には破滅させる魔剣として知られていく。
毒性が強く、少量でも爆発すれば都市一つを壊滅させ、人体にも悪影響を及ぼす危険なエネルギー源なので、乗組員に完全防備をさせた上で採りに向かわせたのだ。願いと破滅を同時にもたらす、魔剣・テュルフングの名にふさわしいエネルギーだった。
「なるべくなら危険な目には遭わせたくないが、採ってこなくては最終目的が達成できないからな」
ソールは冷や汗を流した。ガイアの血が温暖化や貧しい地域の搾取を助長している一方、そんな危険なエネルギーがあったとは……。しかも、グールヴェイグの目標に欠かせないだと。
(こいつらとも長くつき合うわけにはいかないかもな……)
最初にロキを見た時、うさんくさいと思っていたが、漠然とした不信感が確信に変わった。
やがて、補給が終わり進路をアルカディアに向けて発進した。
地中海に差しかかる前夜、ソールはフェニックスの整備をしていた。
恐らく、アルカディア軍は総力を結集してグールヴェイグを迎え撃ちにくるだろう。戦いの最中に整備はできないことが考えられる。念のため機体のメンテナンスをしておいた方が良い。
「それにしても……」
ソールは思うのだ。何故、アポロンはこれを開発したのか。サンギルドシステムが、ガイアの血を使わずに済む次世代のエネルギーというのは画期的だ。
しかし、それならサンギルドシステムをもっと普及させる活動を地道にすればよかったのではないか。何故、よりによって戦闘機を……?
「ん? 何だこれ?」
ソールは、操縦桿の右奥に置かれたあるものに気付いた。黒くて、現代でいうスマートフォンくらいの大きさである。
「パピルスメモリーか……」
パピルスとはこの時代の紙である。パピルスメモリーとは現代のCD-RやUSBのようなもので、この時代のデジタル記録メディアなのだ。
ソールは中を確認しようとフェニックスのタッチパネルに繋いでみた。すると、アポロンの映像が映し出された。
「アポロン……」
今は亡き師がそこにいた。そして、アルカディアに向けて何かを話し始めたのだ……。
――その映像を見たソールは、強く決意した。この映像を、必ずアルカディアに届けると――