秋彼岸が近づき、スーパーではお彼岸に食べる季節商品として、おはぎの売れ行きが良かった。
おはぎの種類はこしあん、きなこ、ごま、ずんだの4種類。愛香はその中でも定番のこしあんが好きだった。
待っててくれているのもあって、お土産におはぎでも買ってあげようかと仕事終わりに私服で着替えた後、レジに並ぶと千晃のおばの万智子がいた。
「あら、愛香ちゃん。もう上がり? おはぎ食べるんだね。若いのに……」
万智子は、愛香からおはぎのパックが入ったかごを受け取り、レジにバーコードを通す。
「私、昔からこしあんが好きなんですよ」
「へぇ、そうなのね。ちーちゃんは、あんこ嫌いだから。あまり買う機会少なくてね。私は好きよ。つぶあんよりこしあん」
「え?! ちょっと待ってください。先生、あんこ嫌いなんですか?」
「そう、甘いのなら、チョコがいいってこどもみたいよね」
「……ちょ、待ってください。そのパック変えてもらってもいいですか。別なもの交換します」
「え? 愛香ちゃんが食べるんじゃないの?」
「え、えっと、先生に渡そうと思ってて、今日、何だか友達と一緒に外で待ってたみたいで」
「? あれまぁ、珍しい。私に会わずに愛香ちゃんに会うのね。あの人も薄情な人だわぁ」
目を丸くしてびっくりした万智子はちょっとご機嫌ななめだった。
「聞こえてるって!」
すると、近くに千晃が話を聞いていた。何やら、飲み物を買った後のようだった。
「あら、ちーちゃん。私にお疲れ様ってこと?」
飲み物を指さして、笑顔で聞く万智子。千晃は、舌をぺろっと出した。
「誰がだよ。これは俺の飲み物。おばさん、コーラ苦手だろ?」
「……こういう時はどんな飲み物でも嬉しいの」
「嘘ばっかり、炭酸嫌いだって言ってただろ」
「……まぁ、いいわ。ほら、愛香ちゃんが差し入れでおはぎ買ってくれたみたいよ。いらないの?」
「お、おう。いただくよ」
好きだ嫌いだも言わずに愛香からもらったものはありがたいと思ったのか素直に受け取っていた。
「え? あんたあんこ嫌いって……」
「いつの話だよ。俺は、何でも食べれるって。ただ、好んで食べないだけだ」
「……まぁまぁ、大人になったわね」
2人のやり取りに横で見ていた愛香はくすっと笑った。
「何がおかしいんだよ」
「ううん。なんでもないです」
万智子は久しぶりに2人が会話をしているところを見て、ほほえましく思った。
出入り口の自動ドアで、見えないように無邪気に笑う3人の様子をうらやましそうに暁斗は見ていたが、また車に戻って1人下唇を噛んで待っていた。あの空間には入って行けない気がした。
夕暮れ時の町内放送が暁斗の胸に静かに響いた。どことなく心寂しく感じた。
おはぎの種類はこしあん、きなこ、ごま、ずんだの4種類。愛香はその中でも定番のこしあんが好きだった。
待っててくれているのもあって、お土産におはぎでも買ってあげようかと仕事終わりに私服で着替えた後、レジに並ぶと千晃のおばの万智子がいた。
「あら、愛香ちゃん。もう上がり? おはぎ食べるんだね。若いのに……」
万智子は、愛香からおはぎのパックが入ったかごを受け取り、レジにバーコードを通す。
「私、昔からこしあんが好きなんですよ」
「へぇ、そうなのね。ちーちゃんは、あんこ嫌いだから。あまり買う機会少なくてね。私は好きよ。つぶあんよりこしあん」
「え?! ちょっと待ってください。先生、あんこ嫌いなんですか?」
「そう、甘いのなら、チョコがいいってこどもみたいよね」
「……ちょ、待ってください。そのパック変えてもらってもいいですか。別なもの交換します」
「え? 愛香ちゃんが食べるんじゃないの?」
「え、えっと、先生に渡そうと思ってて、今日、何だか友達と一緒に外で待ってたみたいで」
「? あれまぁ、珍しい。私に会わずに愛香ちゃんに会うのね。あの人も薄情な人だわぁ」
目を丸くしてびっくりした万智子はちょっとご機嫌ななめだった。
「聞こえてるって!」
すると、近くに千晃が話を聞いていた。何やら、飲み物を買った後のようだった。
「あら、ちーちゃん。私にお疲れ様ってこと?」
飲み物を指さして、笑顔で聞く万智子。千晃は、舌をぺろっと出した。
「誰がだよ。これは俺の飲み物。おばさん、コーラ苦手だろ?」
「……こういう時はどんな飲み物でも嬉しいの」
「嘘ばっかり、炭酸嫌いだって言ってただろ」
「……まぁ、いいわ。ほら、愛香ちゃんが差し入れでおはぎ買ってくれたみたいよ。いらないの?」
「お、おう。いただくよ」
好きだ嫌いだも言わずに愛香からもらったものはありがたいと思ったのか素直に受け取っていた。
「え? あんたあんこ嫌いって……」
「いつの話だよ。俺は、何でも食べれるって。ただ、好んで食べないだけだ」
「……まぁまぁ、大人になったわね」
2人のやり取りに横で見ていた愛香はくすっと笑った。
「何がおかしいんだよ」
「ううん。なんでもないです」
万智子は久しぶりに2人が会話をしているところを見て、ほほえましく思った。
出入り口の自動ドアで、見えないように無邪気に笑う3人の様子をうらやましそうに暁斗は見ていたが、また車に戻って1人下唇を噛んで待っていた。あの空間には入って行けない気がした。
夕暮れ時の町内放送が暁斗の胸に静かに響いた。どことなく心寂しく感じた。