真夜中の公園に電灯がぼんやりと光る。
みだらな姿になったまま、1人ベンチで横たわる。
犯人は用事が済むと、慌ただしく駆け出して行った。
見知らぬ女性ばかりを狙う犯人らしい。交番の掲示板には頻繁に起きてる事件のようだが、未だ犯人は捕まっていなかった。
愛香はその事件に巻き込まれてしまっていた。

何をされるとは、言葉を失うくらいの抵抗もを無視する。
着ている服は破かれて、有無を言わせず、体をまさぐられて、嫌という言葉を発せなくなる。
もう生きてることが不思議なくらいだ。
犯人は頂点に達すると愛香のお腹に白いお土産を置いて行った。
絶望した。顔も見えない。声も気持ちわるい。誰かわからない。抵抗しても動けない。
ベンチに横になったまま、目から涙を流した。
生きているが、生きた心地がしない。
1人夜にここにいることがおかしくなって、むしろ笑いたくなったが、涙も出る。


「愛香!!」

 公園のベンチに愛香が無様な姿で横になっていた。千晃は、着ていたグレーパーカーをそっとかけて愛香の体をまきつけた。

「先生、やっと会えた。探してたんですよ」
「……ごめんな。俺が悪かった。俺が……すまない」

 千晃は、ぎゅっと体を抱きしめた。愛香は数時間ぶりに千晃先生に会えたことに感動の涙と悲しみの涙が出た。さっきまでの恐怖がまだ体で覚えている。震えが小刻みにあらわれる。

「先生、私、もう生きていく自信ないよ。高校も卒業していないし、仕事も限られたことしかできない。これから幸せなことあるのかな。体もぼろぼろ……」

「大丈夫、俺が幸せにするから。まだ何も仕事になっていないけど、きちんと安定した仕事にしてみせるから。着いてきてくれ」

「本当に?」
 愛香は、か細い声で答えた。

「ああ。本当だ」

 その言葉を聞いて安心した愛香はすっと眠りについた。寝顔が天使のように幸せそうだった。千晃先生はお姫様だっこで愛香を車に連れて行った。電灯がまだぼんやりと光っている。千晃は車のエンジンをつけて、エアコンスイッチを入れた。
 ダッシュボートに入れていた紙タバコに火をつける。煙を窓を開けて外に出した。
 
 夜空には煌々と光る星と満月が見えた。