大雨だったのがだんだんに小雨になってきた。雷雲も聞こえないくらい遠くに移動したようだ。
龍弥は、フルフェイスにワイパーがあったらいいなと思いながら、バイクを進めた。小雨でも体に打ちつける雨粒を耐えて、N公園の出入り口付近にバイクをとめて、ヘルメットを外した。
辺りは、夕日が沈み、すっかり真っ暗になってきた。
公園についてすぐに周りを見渡すがどこにも見当たらない。影になっているところや屋根になっているベンチにもいなかった。
ふと、滑り台遊具があるところにも見渡すと薄着でトンネルくぐりの遊具の中でうずくまる菜穂の姿が見えた。
スマホを曲げた膝に乗せて、顔は内側の中の方へして、見えなかった。
龍弥も傘はなく、ジャケットにあった帽子をかぶっていたが、びしょ濡れだった。そっと四つん這いになって隣まで近付いて行った。
すすり泣く声が響く。
あと約30センチというところで進めるのをやめて、あぐらで座ってみた。
気配を感じた菜穂は、ハッと息を止めて横を見た。
電灯が遠くにあって、真っ暗だっため、頭まで黒い服着た男の人がいるのが、恐怖に思えて後ずさりして怖くて声を出せなかった。
「待てって!」
龍弥は腕を掴んだ。
「きゃー。」
かぶっていたジャケットの帽子を外した。
「俺だって。電話で呼び出しただろ!」
「なんでいるの?」
「なんでってさっき電話で…って別に来なくて良かったなら、帰るけど…。」
がっかりして龍弥は、外に出ようとした。
「待って!」
腕を掴んだ。
「何。」
「ここにいてください。」
「はぁ……。」
膝を抱えて菜穂と同じ格好になった。
深呼吸して、ため息をつく。
「今、話すから。」
ヒックヒックと呼吸が落ち着かない。
「落ち着けって。ヒッヒ、フーでしょう。」
「それ、出産の時じゃん。生まれないし!!」
少しいつもの自分を取り戻した菜穂。
「それでいいって。いつもの菜穂じゃん。」
「ばか!!」
また涙が出て、肩を叩く。
自分のことこんなに見てくれる人いなかったと思った。
「いたっ。」
1回と思ったら今度は反対側も叩かれた。
「ちょ、やめろって。」
泣きながら
「ごめん。ありがとう。」
たたかれそうになった菜穂の両腕をおさえた。
ふっと力が抜けたのか肩に顔をつけた。
龍弥は、頭をポンポンポンと軽く撫でた。
「素直になれって。菜穂って名前なんだから。」
「…龍弥に言われたくない。」
「俺はいいの。俺は狼だから。本心は隠すんだ。……てか、木村という彼氏がいながら、俺に連絡してよかったわけ?俺、彼氏じゃありませんけど。しかも今日フットサルの日でもないし、もう師匠でもないし。」
「木村くん、彼氏じゃないもん。友達だもん。」
体勢は変わらずにそのまま話し出す。
「へー。昼間、弁当一緒に食べてる仲なのに?」
「……いいの。」
「何が。」
「木村くんとご飯食べると緊張しすぎて美味しくないし。」
「……うん。」
「だから……。」
「へー。」
「えっと…。」
「ふーん。」
だんだんと龍弥の相槌が棒読みになってきた。話を聞いてない。
「俺、帰ってもいい?」
立ち上がって帰ろうとする。
「いてよ!いいの。龍弥がいいの!!」
「ちっ…。」
せっかく龍弥のことを言ってるのに、面倒になったそぶりをして、またあぐらをかいて座る。
心の中ではものすごく喜んでいた。
「舌打ちしないでよ!」
小競り合いをしたあと、一呼吸置いて、話し始める。
「………お父さんとお母さん。家で大喧嘩して、皿とかコップとか割れるくらい暴れるから、逃げてきた。仲裁に入ったのに私のこと見てくれなかった。」
突然にはじまるシリアスな話。
龍弥は真剣に聞き始めた。
「原因なんなの?」
「私がたまたま見てたCMのサファリパークの話したら、お父さんとお母さんの様子おかしくて、言い合いになって喧嘩になった。私がそのこと言わなきゃ喧嘩にならなかったかなと思うと言わなきゃ良かったって後悔して…でも、もう、家に帰りたくない。」
「そのさぁ、サファリの話って西原さんじゃねぇの?」
「…えっ?」
菜穂が拍子抜けするように驚いた。
「西原さんって誰?」
「え、菜穂が前言ってたじゃん。お父さんと浮気してるところ見たって。フットサルの受付の#西原萌香__にしはら もえか__#。その人とサファリ行ったんじゃないの?」
「…あぁ。そういうことだったんだ。だからお母さんが怒ったんだ。その人と行ったから一緒に行きたくないってことだ。そっか……なんか、分かって良かった。」
「言ってたのよ、西原さん。フットサルの手続きするときにサファリパークの話してたから。何か、カピバラが可愛かったんですぅって言ってたのよ。誰と言ったのかなとは思ってたけど、菜穂のお父さんと行ったんだね。謎が解けたわ。」
「私、そのサファリパーク行ったことない。ずるい、西原さんと行くなんて。」
「やきもち?お父さんに?」
「そういうわけじゃないんだけどさ。」
ぎゅるるるるるぅ~
大きな音を立てて菜穂のお腹が鳴る。こういうときでもお腹は正直だ。
恥ずかしくなった菜穂はお腹に手を当てて隠した。
「腹、減ってんね。帰った方いいんじゃねえの?」
龍弥は帰宅を促す。
ようやく外は雨が止んできたようだ。
「やだ。帰りたくない。」
珍しく駄々をこねる子どもみたいに帰るのを嫌がった。
龍弥は、ふぅとため息をついて、バイクのヘルメットを菜穂の頭にかぶせた。
2人分のヘルメットを持ち合わせていなかった。
「ほら、行くぞ。」
龍弥は菜穂を促して、バイクの後ろに乗せた。本当はノーヘルメットは違反してるって分かってはいたが、目的地は住宅地を抜けてここから5分のところだった。
想像以上に密着するバイクの後ろ。
菜穂はどさくさに紛れて両手をぎゅっとして、龍弥のお腹で自分の手をにぎった。頬を背中にぴとっと、つけた。
真夏の暑い夜、暑くても龍弥の背中は心地よかった。
なんかいつもより近いなと感じながらも、龍弥はバイクを走らせた。
夜空は雲が途切れて、キラキラと満天の星空が輝いていた。
龍弥は、フルフェイスにワイパーがあったらいいなと思いながら、バイクを進めた。小雨でも体に打ちつける雨粒を耐えて、N公園の出入り口付近にバイクをとめて、ヘルメットを外した。
辺りは、夕日が沈み、すっかり真っ暗になってきた。
公園についてすぐに周りを見渡すがどこにも見当たらない。影になっているところや屋根になっているベンチにもいなかった。
ふと、滑り台遊具があるところにも見渡すと薄着でトンネルくぐりの遊具の中でうずくまる菜穂の姿が見えた。
スマホを曲げた膝に乗せて、顔は内側の中の方へして、見えなかった。
龍弥も傘はなく、ジャケットにあった帽子をかぶっていたが、びしょ濡れだった。そっと四つん這いになって隣まで近付いて行った。
すすり泣く声が響く。
あと約30センチというところで進めるのをやめて、あぐらで座ってみた。
気配を感じた菜穂は、ハッと息を止めて横を見た。
電灯が遠くにあって、真っ暗だっため、頭まで黒い服着た男の人がいるのが、恐怖に思えて後ずさりして怖くて声を出せなかった。
「待てって!」
龍弥は腕を掴んだ。
「きゃー。」
かぶっていたジャケットの帽子を外した。
「俺だって。電話で呼び出しただろ!」
「なんでいるの?」
「なんでってさっき電話で…って別に来なくて良かったなら、帰るけど…。」
がっかりして龍弥は、外に出ようとした。
「待って!」
腕を掴んだ。
「何。」
「ここにいてください。」
「はぁ……。」
膝を抱えて菜穂と同じ格好になった。
深呼吸して、ため息をつく。
「今、話すから。」
ヒックヒックと呼吸が落ち着かない。
「落ち着けって。ヒッヒ、フーでしょう。」
「それ、出産の時じゃん。生まれないし!!」
少しいつもの自分を取り戻した菜穂。
「それでいいって。いつもの菜穂じゃん。」
「ばか!!」
また涙が出て、肩を叩く。
自分のことこんなに見てくれる人いなかったと思った。
「いたっ。」
1回と思ったら今度は反対側も叩かれた。
「ちょ、やめろって。」
泣きながら
「ごめん。ありがとう。」
たたかれそうになった菜穂の両腕をおさえた。
ふっと力が抜けたのか肩に顔をつけた。
龍弥は、頭をポンポンポンと軽く撫でた。
「素直になれって。菜穂って名前なんだから。」
「…龍弥に言われたくない。」
「俺はいいの。俺は狼だから。本心は隠すんだ。……てか、木村という彼氏がいながら、俺に連絡してよかったわけ?俺、彼氏じゃありませんけど。しかも今日フットサルの日でもないし、もう師匠でもないし。」
「木村くん、彼氏じゃないもん。友達だもん。」
体勢は変わらずにそのまま話し出す。
「へー。昼間、弁当一緒に食べてる仲なのに?」
「……いいの。」
「何が。」
「木村くんとご飯食べると緊張しすぎて美味しくないし。」
「……うん。」
「だから……。」
「へー。」
「えっと…。」
「ふーん。」
だんだんと龍弥の相槌が棒読みになってきた。話を聞いてない。
「俺、帰ってもいい?」
立ち上がって帰ろうとする。
「いてよ!いいの。龍弥がいいの!!」
「ちっ…。」
せっかく龍弥のことを言ってるのに、面倒になったそぶりをして、またあぐらをかいて座る。
心の中ではものすごく喜んでいた。
「舌打ちしないでよ!」
小競り合いをしたあと、一呼吸置いて、話し始める。
「………お父さんとお母さん。家で大喧嘩して、皿とかコップとか割れるくらい暴れるから、逃げてきた。仲裁に入ったのに私のこと見てくれなかった。」
突然にはじまるシリアスな話。
龍弥は真剣に聞き始めた。
「原因なんなの?」
「私がたまたま見てたCMのサファリパークの話したら、お父さんとお母さんの様子おかしくて、言い合いになって喧嘩になった。私がそのこと言わなきゃ喧嘩にならなかったかなと思うと言わなきゃ良かったって後悔して…でも、もう、家に帰りたくない。」
「そのさぁ、サファリの話って西原さんじゃねぇの?」
「…えっ?」
菜穂が拍子抜けするように驚いた。
「西原さんって誰?」
「え、菜穂が前言ってたじゃん。お父さんと浮気してるところ見たって。フットサルの受付の#西原萌香__にしはら もえか__#。その人とサファリ行ったんじゃないの?」
「…あぁ。そういうことだったんだ。だからお母さんが怒ったんだ。その人と行ったから一緒に行きたくないってことだ。そっか……なんか、分かって良かった。」
「言ってたのよ、西原さん。フットサルの手続きするときにサファリパークの話してたから。何か、カピバラが可愛かったんですぅって言ってたのよ。誰と言ったのかなとは思ってたけど、菜穂のお父さんと行ったんだね。謎が解けたわ。」
「私、そのサファリパーク行ったことない。ずるい、西原さんと行くなんて。」
「やきもち?お父さんに?」
「そういうわけじゃないんだけどさ。」
ぎゅるるるるるぅ~
大きな音を立てて菜穂のお腹が鳴る。こういうときでもお腹は正直だ。
恥ずかしくなった菜穂はお腹に手を当てて隠した。
「腹、減ってんね。帰った方いいんじゃねえの?」
龍弥は帰宅を促す。
ようやく外は雨が止んできたようだ。
「やだ。帰りたくない。」
珍しく駄々をこねる子どもみたいに帰るのを嫌がった。
龍弥は、ふぅとため息をついて、バイクのヘルメットを菜穂の頭にかぶせた。
2人分のヘルメットを持ち合わせていなかった。
「ほら、行くぞ。」
龍弥は菜穂を促して、バイクの後ろに乗せた。本当はノーヘルメットは違反してるって分かってはいたが、目的地は住宅地を抜けてここから5分のところだった。
想像以上に密着するバイクの後ろ。
菜穂はどさくさに紛れて両手をぎゅっとして、龍弥のお腹で自分の手をにぎった。頬を背中にぴとっと、つけた。
真夏の暑い夜、暑くても龍弥の背中は心地よかった。
なんかいつもより近いなと感じながらも、龍弥はバイクを走らせた。
夜空は雲が途切れて、キラキラと満天の星空が輝いていた。