龍弥は、参加もしたこともない部活。
幽霊部員だった。
「菜穂は確か陸上部だよ。龍弥くん走ってるところ見たことないし。」
「違うよ,俺,写真部だし。菜穂も写真部だよ。あんま、参加してないけど…。」
「嘘、確か、陸上部って言ってた気がするけど…。」
「友達なのにどこに部活入ってるとかわからないんだな。興味ないとか?」
「そんなことない!てか、はぐらかされた。菜穂とは付き合ってないよね?!ただライン交換しただけ?」
「ご想像にお任せします。」
「ちっ…。」
まゆみは、爪を噛んで悔しがった。
もう、いざこざに巻き込まれるのは面倒だなと感じた。
ガラケーの電話交換にしたかったのに、スマホがあることに気づかれた。
菜穂のアイコンは青空と雲の写真を見て、すぐに勘づいた。
もちろん、まゆみにも菜穂のラインの友だち登録されていた。
頻繁にメッセージ交換するわけではない。
学校で会話することの方が多いが、建前の当たり障りない話ばかりで、的を得た言葉でズバッと言う癖はある。
常に自分が1番でありたいまゆみは、恋愛に関しては誰かに越されたりするのは嫌だった。
成績で全然上を目指せないが、得意分野で上になりたい気持ちが強かったのかもしれない。
まゆみの友達同士の話で、付き合った人数の話だったり、経験人数の話で盛り上がったことがあり、それは自分だけ1番多かったことにとても高揚感を感じ
た。
成績の話になると必ずで言って良いほど、赤点を取って補修を受けるまゆみは、別な場面で上に立てるのが嬉しかった。
恋愛は好きや嫌いで決めていない。
誰と付き合ったかイケメンで人気の高い人か、付き合った期間は関係ない。
誰に何を言うとそこだけが目指すことだった。
そこに愛はない。
まゆみはそういう人だった。
龍弥は、本当は関わりたくなかったが、なぜかかわいそうの気持ちが生まれ、断るのはできなかった。
相手をするなら近づかないと言ってるのに、結局そのままの流れで継続することになる。
目の上のたんこぶのように1週間はまゆみの彼氏という肩書で過ごすことになった。
彼氏だとはこれっぽっちも思っていない。
とある3日目の購買部で横にぴったり引っ付いて離れないまゆみを横に後ろに並ぶ菜穂がいた。
菜穂が龍弥と連絡先を交換していると知って、まゆみは菜穂との交流を避けていた。
教室で会っても、昇降口で会っても透明人間のようにスルーされた。
なんとなく状況を察知した菜穂は、割り切ってこちらから挨拶も声をかけることもしなかった。
龍弥と何の関係を持ってないのに嫉妬されているのは滑稽だった。
まるで数日前の龍弥の代わりをしているようで、菜穂の方がクラスメイトと会話をするのが少なくなっている。
購買部の行列に並ぶ2人の後ろは龍弥がかなり嫌がっていて面白くて涙が出るくらい楽しかった。
その様子を知ってか知らずかまゆみはずっと隣にいる。
菜穂の笑いをおさえている顔を見て龍弥は額に青筋を立ててイラだっている。
****
その日の夜のフットサルでは…
「あのさ、あの時、なんで笑ったん?」
コートに着いて早々に龍弥は菜穂に声をかける。ベンチからラウンジの方に歩く菜穂に着いていく。
「え、何のことかな。」
「知らないふりすんなって、学校の購買部で並んでた時、俺のこと笑っただろ?」
「あぁ、あれね。だって、すごい顔してたから、面白くてさ。まゆみと付き合うのがそんなに嫌なの?」
菜穂は自販機でペットボトルのお茶を買った。ガコンと音が響いた。
ラウンジにあるいすに座り、テーブルに腕を伸ばして、右頬をまくらのようにだらけた龍弥。龍弥の左頬にペットボトルのお茶をつける菜穂。
自分の左手でつかもうとしたが、パッと上に持ち上げた。
「…菜穂なら、素直に言えるのにな。」
「ん?どういう意味?」
「何でもない…。」
ぼそっと呟いた言葉がどういうことかわからない菜穂、龍弥はまゆみより菜穂の方が本音で話せるし楽だと感じていた。
体を起こして、コートの方へ歩く。
「あのさ、そういや、部活って今どこに入ってんの?」
「え、時々しか参加してないけど、写真部だよ。なんで聞くの?」
「あぁ、そう。やっぱり陸上部じゃないじゃんか。」
「え、なんで陸上部のことも知ってるの?前は確かに陸上部いたけど、転部したんだ。メンバーとソリが合わなくて…。週に1回の活動で済むから写真部いいなって思ってて。」
「実は俺も写真部所属してんのよ。全然行ってないけど…一回くらいは行ったかな。花壇の写真を撮ってこいって部活の顧問に言われてさ。コンクールに応募を自動的にしたみたいだけど。」
「え、龍弥、文化部?!バリバリの運動部じゃないの?イメージ違うじゃない。同じって気づかなかった。会わないはずだよね。」
「まぁ、中学の時は行っていたけどさ。いろいろあって…。高校の部活してたらここに来ないけどな。」
ボールを持ち上げて、リフティングを始めた。
「サッカー部…いたんじゃないの?」
「…今度話すから。今はそっとしといて。」
含みを持たすように言う。
菜穂は、何も言えなくなった。話してくれるように待つことにした。
「龍弥さーん。」
滝田が龍弥と肩を組んだ。ボスっと鈍い音がした。
「滝田、勘弁して。苦しいよ。」
「あ、ごめんなさい。今日から、右耳のピアスも復活したんすね。耳の怪我大変でしたよね。喧嘩でもしたんですか?」
「ちょっとした事故でさ。やっと皮膚が落ち着いたからまたピアスつけられるようになったのよ。」
「なるほど。」
「おーおー、2人ともお揃いだね。」
下野が後ろから荷物を持ってやってきた。
体を乗り出して、龍弥は声をかける。
「こんばんは。下野さん、その後、瑞紀ちゃんとはどうなったんですか?」
「え、それ聞いちゃう?実は、OKもらってさ。今日は、ほら、あっちにいるんだけど、終わったら、一緒に帰るのよ。ラブラブでね。若返る感じするよ。」
「げっげっ、生々しいなぁ。下野さんおじさんくさいっすよ。」
「いやぁ、もうおじさんだよ。おじさんに付き合ってくれるなんて嬉しいよね。」
何を言われてもメンタルが強いようで、恋は盲目というのだろうか。
遠くのベンチにいる瑞紀は手を振ってこちらを見ている。
大学生3人組が相変わらず仲良くしていた。
「あ、菜穂。今日は大丈夫なん?お父さんは?」
「…うん。大丈夫。自転車に乗ってきたから。お父さん、当分おばあちゃんのこと見てなくちゃいけないから来られないって言うし…先週はありがとう。助かった。」
「え、え、え。何、何。お2人さんなんかあるの?やっぱり付き合ってるの?」
下野は言う。
「違います。」
完全否定する菜穂。
「前の時、大雨降ってたじゃないですか。こいつ、将志さんが迎え来られないからって泣いてるんすよ。だから、俺が…うっ。」
龍弥は左の足を思いっきり菜穂に蹴られた。
「余計なこと言うな!!」
デリカシーにかけるようだ。地味に痛みが後から来るようだ。
菜穂はご立腹のようだ。
「龍弥、そういうの言いふらすのはよくないわ。」
「龍弥さん、女の子には優しくっすよ。言葉には気をつけないと…。」
「そのようだな。気をつけるよ。特にあいつには…。」
「菜穂さんあんなに怒らせるなんて、珍しいっすね。龍弥さん何かあったんすか?」
「知らねえよ。」
お互いに素直になれない2人だった。
幽霊部員だった。
「菜穂は確か陸上部だよ。龍弥くん走ってるところ見たことないし。」
「違うよ,俺,写真部だし。菜穂も写真部だよ。あんま、参加してないけど…。」
「嘘、確か、陸上部って言ってた気がするけど…。」
「友達なのにどこに部活入ってるとかわからないんだな。興味ないとか?」
「そんなことない!てか、はぐらかされた。菜穂とは付き合ってないよね?!ただライン交換しただけ?」
「ご想像にお任せします。」
「ちっ…。」
まゆみは、爪を噛んで悔しがった。
もう、いざこざに巻き込まれるのは面倒だなと感じた。
ガラケーの電話交換にしたかったのに、スマホがあることに気づかれた。
菜穂のアイコンは青空と雲の写真を見て、すぐに勘づいた。
もちろん、まゆみにも菜穂のラインの友だち登録されていた。
頻繁にメッセージ交換するわけではない。
学校で会話することの方が多いが、建前の当たり障りない話ばかりで、的を得た言葉でズバッと言う癖はある。
常に自分が1番でありたいまゆみは、恋愛に関しては誰かに越されたりするのは嫌だった。
成績で全然上を目指せないが、得意分野で上になりたい気持ちが強かったのかもしれない。
まゆみの友達同士の話で、付き合った人数の話だったり、経験人数の話で盛り上がったことがあり、それは自分だけ1番多かったことにとても高揚感を感じ
た。
成績の話になると必ずで言って良いほど、赤点を取って補修を受けるまゆみは、別な場面で上に立てるのが嬉しかった。
恋愛は好きや嫌いで決めていない。
誰と付き合ったかイケメンで人気の高い人か、付き合った期間は関係ない。
誰に何を言うとそこだけが目指すことだった。
そこに愛はない。
まゆみはそういう人だった。
龍弥は、本当は関わりたくなかったが、なぜかかわいそうの気持ちが生まれ、断るのはできなかった。
相手をするなら近づかないと言ってるのに、結局そのままの流れで継続することになる。
目の上のたんこぶのように1週間はまゆみの彼氏という肩書で過ごすことになった。
彼氏だとはこれっぽっちも思っていない。
とある3日目の購買部で横にぴったり引っ付いて離れないまゆみを横に後ろに並ぶ菜穂がいた。
菜穂が龍弥と連絡先を交換していると知って、まゆみは菜穂との交流を避けていた。
教室で会っても、昇降口で会っても透明人間のようにスルーされた。
なんとなく状況を察知した菜穂は、割り切ってこちらから挨拶も声をかけることもしなかった。
龍弥と何の関係を持ってないのに嫉妬されているのは滑稽だった。
まるで数日前の龍弥の代わりをしているようで、菜穂の方がクラスメイトと会話をするのが少なくなっている。
購買部の行列に並ぶ2人の後ろは龍弥がかなり嫌がっていて面白くて涙が出るくらい楽しかった。
その様子を知ってか知らずかまゆみはずっと隣にいる。
菜穂の笑いをおさえている顔を見て龍弥は額に青筋を立ててイラだっている。
****
その日の夜のフットサルでは…
「あのさ、あの時、なんで笑ったん?」
コートに着いて早々に龍弥は菜穂に声をかける。ベンチからラウンジの方に歩く菜穂に着いていく。
「え、何のことかな。」
「知らないふりすんなって、学校の購買部で並んでた時、俺のこと笑っただろ?」
「あぁ、あれね。だって、すごい顔してたから、面白くてさ。まゆみと付き合うのがそんなに嫌なの?」
菜穂は自販機でペットボトルのお茶を買った。ガコンと音が響いた。
ラウンジにあるいすに座り、テーブルに腕を伸ばして、右頬をまくらのようにだらけた龍弥。龍弥の左頬にペットボトルのお茶をつける菜穂。
自分の左手でつかもうとしたが、パッと上に持ち上げた。
「…菜穂なら、素直に言えるのにな。」
「ん?どういう意味?」
「何でもない…。」
ぼそっと呟いた言葉がどういうことかわからない菜穂、龍弥はまゆみより菜穂の方が本音で話せるし楽だと感じていた。
体を起こして、コートの方へ歩く。
「あのさ、そういや、部活って今どこに入ってんの?」
「え、時々しか参加してないけど、写真部だよ。なんで聞くの?」
「あぁ、そう。やっぱり陸上部じゃないじゃんか。」
「え、なんで陸上部のことも知ってるの?前は確かに陸上部いたけど、転部したんだ。メンバーとソリが合わなくて…。週に1回の活動で済むから写真部いいなって思ってて。」
「実は俺も写真部所属してんのよ。全然行ってないけど…一回くらいは行ったかな。花壇の写真を撮ってこいって部活の顧問に言われてさ。コンクールに応募を自動的にしたみたいだけど。」
「え、龍弥、文化部?!バリバリの運動部じゃないの?イメージ違うじゃない。同じって気づかなかった。会わないはずだよね。」
「まぁ、中学の時は行っていたけどさ。いろいろあって…。高校の部活してたらここに来ないけどな。」
ボールを持ち上げて、リフティングを始めた。
「サッカー部…いたんじゃないの?」
「…今度話すから。今はそっとしといて。」
含みを持たすように言う。
菜穂は、何も言えなくなった。話してくれるように待つことにした。
「龍弥さーん。」
滝田が龍弥と肩を組んだ。ボスっと鈍い音がした。
「滝田、勘弁して。苦しいよ。」
「あ、ごめんなさい。今日から、右耳のピアスも復活したんすね。耳の怪我大変でしたよね。喧嘩でもしたんですか?」
「ちょっとした事故でさ。やっと皮膚が落ち着いたからまたピアスつけられるようになったのよ。」
「なるほど。」
「おーおー、2人ともお揃いだね。」
下野が後ろから荷物を持ってやってきた。
体を乗り出して、龍弥は声をかける。
「こんばんは。下野さん、その後、瑞紀ちゃんとはどうなったんですか?」
「え、それ聞いちゃう?実は、OKもらってさ。今日は、ほら、あっちにいるんだけど、終わったら、一緒に帰るのよ。ラブラブでね。若返る感じするよ。」
「げっげっ、生々しいなぁ。下野さんおじさんくさいっすよ。」
「いやぁ、もうおじさんだよ。おじさんに付き合ってくれるなんて嬉しいよね。」
何を言われてもメンタルが強いようで、恋は盲目というのだろうか。
遠くのベンチにいる瑞紀は手を振ってこちらを見ている。
大学生3人組が相変わらず仲良くしていた。
「あ、菜穂。今日は大丈夫なん?お父さんは?」
「…うん。大丈夫。自転車に乗ってきたから。お父さん、当分おばあちゃんのこと見てなくちゃいけないから来られないって言うし…先週はありがとう。助かった。」
「え、え、え。何、何。お2人さんなんかあるの?やっぱり付き合ってるの?」
下野は言う。
「違います。」
完全否定する菜穂。
「前の時、大雨降ってたじゃないですか。こいつ、将志さんが迎え来られないからって泣いてるんすよ。だから、俺が…うっ。」
龍弥は左の足を思いっきり菜穂に蹴られた。
「余計なこと言うな!!」
デリカシーにかけるようだ。地味に痛みが後から来るようだ。
菜穂はご立腹のようだ。
「龍弥、そういうの言いふらすのはよくないわ。」
「龍弥さん、女の子には優しくっすよ。言葉には気をつけないと…。」
「そのようだな。気をつけるよ。特にあいつには…。」
「菜穂さんあんなに怒らせるなんて、珍しいっすね。龍弥さん何かあったんすか?」
「知らねえよ。」
お互いに素直になれない2人だった。