そして、緩まった腕から起きようとした瞬間、くいっと腕を引かれ、何時の間にか手中に収めたぞ、と言う策士の顔に変わった彼は、悪戯っ子のように微笑みつつ、


「董さん、だぁーいすき」


なんて、蜂蜜よりも甘い声で囁いて、私の口唇をふにっと奪っていった。


一体何が…?と気持ちを整理する前に、彼は私をベッドに残して、そのままキッチンへと向かう。


「…〜っ!上着くらい着ろ!ばか!」


キスをされたと認識した私は、そう言って近くにあったTシャツを投げ付けてやった。


お子様も黙る、見事な朝チュンではあったけれど、きっとこのシチュエーションは、必ず何処かのタイミングで、やって来たのではないかと、そうなんとなく思わされてしまう辺り…どんでもない男に好かれてしまったと、そう思った。


「董さん、オレの気持ち早く飲み込んでね?」


もう、彼のこの勢いが有り過ぎるくらいの想いに、飲み込まれ始めている私には、彼から身を防ぐ事は出来ないんだろうな…きっと、私達はこの一夜で変わっていくんだなと…真っ赤になってベッと舌を出し、


「ばかっ!」


と、騒ぐ私はそう観念するのであった。


Fin.