「董さん、オレのこと少しは意識してくれる?」

「…うーん。それはこれからの小泉君の頑張り次第?かなぁ」

「まじかぁー…でも…オレ、絶対に董さんのこと振り向かせるからね!」


て、大体この態勢をずっと留めている事自体、もう既に心を許しているようなもんかな?とも思うけど。


でも、それを口にするのは何となく年上としてのプライドが邪魔をして言えなかった。


「さて。そろそろ退いて?私もう帰る」

「そんなぁ…あ!ご飯作るから、それだけ!それだけ食べてって?直ぐだから!」



何処ぞのセフレ彼女か、と思う程うるうるした瞳に不安そうな光を宿す。
チャラくて仕方ないんだろうなと思っていた後輩に、こんなに激重で激甘な対応をされるとは、思っては見なかったけれど…。
それでも、不思議と悪い気はしない。


自分でも絆されるのが早過ぎるなとは感じるけれど、こうも純粋培養な愛情を一身に注がれでしまっては、やはり…女として嬉しくない訳はないから。


そんな理由付けを色々しながら、目の前で私に向けて、イエス?イエス?と尻尾をぶんぶん振っている彼に、くすりと笑みを浮かべて、


「はいはい、降参。でも、ご飯食べたら帰るからね?」


と言った。