「好き、大好き。早くオレのこと好きになって?少しでもいいから意識して…?」


薄いキャミソール越しに感じる彼の体温。
こんなにも愛を真っ直ぐに、ぶつけられたのは人生初の出来事で…。


「私の何処がいいんだか…」


そう、呟いていた。
すると、彼は一瞬目を見開いてから眉を八の字に緩めて、とろりと溶ける飴玉の様な視線を私に向けて来た。


「董さんは、俺にとって命の恩人だから」


あまりにも、甘過ぎるその声色に背中がサワサワと落ち着かない。


話を聞けば、入社試験の時にガチガチだった彼に対して、

『面接なんて、ある意味雑談と同じよ。ほら、そんなに白くなる程手を握り締めてないで、順番迄深呼吸していて?』


と、声を掛けたらしい。


まぁ、あの時は私が面接時の誘導係や裏方をしていたから、そんな事があったかって言われたら、あったかもしれないけど…。

まぁまぁ、忙し過ぎて。
実はそんな事は記憶にないほど小さくて正直覚えていない…でも、私の何気ない一言で、今までこんなに頑張って来てくれたんだと思うと…なんというか、こう…胸が年甲斐も無くきゅんとするから。


「あ、ありがと?」


と短く返すと、彼はこれ以上ないくらい破顔して、私の体を抱き締めた。