弱々しい声。
少し震えているのが、緊張として伝わってくる。
飲み屋特有の、アルコールと煙草の匂いが混ざった所に、彼のフレグランスなのか、はたまた柔軟剤とかの香りなのか、鼻孔には私の好みの匂いが擽り、なんだか一気に抵抗するタイミングを失ってしまった。


「小泉、く…」

「だって、オレ…。古河さんが、好きなんだもん」


…だから、離れたくない。


珍しく、ペースを乱して飲んでるなぁ、なんて気楽に傍観していたのが、不味かったのだろうか?


すっかり出来上がって、ぎゅうぎゅうと大型犬さながら擦り寄り力強く私を抱き締める彼は、まるで子供の様に、宥めようと口を開き掛けた私の肩にぐりぐりとおでこを付けて、イヤイヤと首を振っている。


「ね、ねぇ?小泉君……あの、さ」

「古河さんは、オレの事嫌い?…やだ?」


う。
誰だ、こんなイケメンの大型犬なのに、うるうるお目々のチワワのような要素を取り込んだのは!

そう思って、はぁと溜息を吐くと小泉君の体が、余計に私を抱き締めてくる。


いや、こんなに密着されても困るんだが…。
てか、可愛いとか思ってる時点で何かがおかしい。