ジジジ


まだまだ先に聞こえる筈の、蝉の声。
この有り得ない熱帯夜に、気分は滅茶苦茶下がる。

それでも…隣にいる彼の顔色を伺い、大分さっきよりマシになってきた事に、安堵した。



「小泉君、大丈夫?」

「すみません、古河さん。迷惑かけちゃって」

「そんな事、良いって。あのままじゃあ帰せないし」



私達は、そんな会話をしながらベンチに座る。
そのベンチは、思いの外ヒンヤリとしていて、アルコールと飲み会の雰囲気で火照った体を落ち着かせてくれる。


「あ!そう言えば。小泉君この後予定あるとか言ってなかった?」


いいの?


そう、声を掛けようとして、顔を覗き込んだら不意を付いて抱き締められた。


「…は?」

「…帰っちゃ、だめ…」