私の経験からして、大体私よりも下の男の人は、上司の洗礼を受けてかなりの量を勧められる。

うちの課長は、特にお酒を飲むのが好きだから、こういった場所になると張り切りたがる。
…まぁ、家に娘しかしないからという事で、課内の若い男の人達にしか、アルコールを勧めたりしないから、まだいいのかもしれないけれど…あ、それもパワハラに値する昨今か。

私は、お財布から会費を支払って、幹事に短めの挨拶をすると、一人お店から出た。


まだ梅雨になる手前だと言うのに、この蒸し暑さは体に堪える。
クーラーの効き過ぎていた店内から、急に重っ苦しい湿度を纏った屋外に出てしまったから、反動で目眩がする。


トータルで四杯程度しか飲んでいないから、自称ザルである自分が酔っている感覚はなかったのに、突然後ろから肩を掴まれて、びくり、と心臓が震えた。


「え…?」

「古河さん、大丈夫、ですか?」

「え?…あ、うん、大丈夫。というか、小泉君こそ、かなり酔ってる?」

「え、なん、で…?」

「だって、顔色さっきは真っ赤だったのに、今ちょっとヤバそう…」


そう伝えると、彼は口元に手を当てて私から視線を少しだけ逸した。

何か言おうと言い及んでいるかのように。


そんな中、店内からわらわらと二次会行きの人達が出てくる気配があり、私は咄嗟に彼の腕を掴むと、彼の気分の悪くならない程度の歩幅を保って、ずるずると引き摺るようにしながら、場所を移動して行った。