「ん…」

カーテンの隙間から溢れる光に瞼が撫でられ、そのさらさらとした感覚で目覚めると、其処は私の部屋では無かった。
天井を見上げて、違和感を感じたのだ。
慌てて、体を起こそうとして、お腹の辺りに圧がある事に気付く。


「すぅー…」

「え…?」


後ろから抱き締められるようにして、私のお腹に手を巻き付けて眠っていたのは、如何考えても…会社で挨拶をする程度の関係な二つ年下の小泉君だった。


私は、急激にバクバクと鳴ってゆく鼓動を、何とか抑え込んで、昨日の記憶を辿る。


確か、昨日は少し遅れた新人歓迎会だった。
私は、其処に上司がいるという、所謂『異様な合コン』状態に辟易していて、そっと輪の外へと外れチビチビと、レモンサワーのグラスに口を付けていた。

三杯目は、緑茶ハイ。
はいはい、干物で結構。
これがなかなかオツなのよ。
そんな風に自分で突っ込んで、ゆるりと輪の中を見渡す。
するとその視界に入ったのは二つ年下で、少しチャラそうなイメージのある後輩の、小泉貴大(こいずみたかひろ)君。

キャッキャと新人の女の子達に囲まれて困っている様子は、少し可哀想で視線が合った時に、私はひらり、と小さく手を振った。


それから、暫く経って…この店から二次会に行こうかなんという、かなり面倒臭い雰囲気がやって来て、私はそろそろお暇しようかと、近くにいた幹事になっている同期に挨拶をしに行った。


その時、ふらりと私の横に並んだのが、彼。


「これから、俺用事あるんで、ここで失礼します」


少し、いやかなり、頬が赤かった。
それを横目で見て、なんとなく…本当になんとなく、


『あ、この子あんまりチャラい訳ではないのかな…?』


と、思ったのだ。