「〜っ、ばかじゃん。
そんなん言っても何も出ないしっ!」
〝可愛い〟なんて、
何年振りに言われただろう。
思い出したくなくて、忘れてた気がする。
たぶん、それぐらい言われてない言葉。
「ははっ、照れてる先輩も可愛いっすよ」
「〜っ、あー、もう、勝手に言ってて」
「わぁ、ありがとうございます!
じゃ、勝手に聞いてもいいですか?」
「勝手にって言ってるからどーぞ!」
言われ慣れてなさすぎて、
こんなに年下の男の子に翻弄されるなんて思ってもみなかった。
(藤島くん、なんてあざとい............っ、)
心の中でそう思ったと同時。
「ね、先輩。恋、しないんすか?」
後輩くんの何気ないひと言が、
─────私の過去の記憶を呼び覚ました。