「早くいこう?」

俺の事をせかしながらお気に入りの店などを話してくれた。
彼女はこの街について沢山知っていた。それだけじゃない俺の事についても知っているようだった。

隠れた喫茶店や昔ながらの文房具屋さん、俺のお気に入りだった公園、昔お化け屋敷が怖くて入る前に腰を抜かしたこと

ずっとこの街にいる俺ですら知らない店や忘れているような出来事を俺より深く、明確に覚えているようだった。こんな気持ちになるのはひさしふりだ。まるで梨華と過ごしていたような感覚で懐かしく楽しかった。けれど腑に落ちない部分があり、心の中でぐるぐるぐるぐる渦巻いてるようだった。

―この違和感は一体なんだ?