「もう、どこにも行かないでくれ、お願いだから」

やっとの思いで出てきた言葉はそれだけだった。これ以上、梨華を追い詰めるような事はしたくない。

「ごめんね。」

本当に最期なんだな、梨華の返事を聞いて確信した。
だけど最期ならこれだけは言いたい、昔みたいに後悔はしたくない。梨華を困らせてしまうだろう。けど迷惑をかけるのも我儘を言うのもこれで最後にするから、ゆるしてほしい。

「好きだ。梨華」

「なんで、なんで今更そんな事言うの、私だって普人くんのこと好きだった、今もずっと。けど私死んじゃうかもしれないんだよ?!死ぬ覚悟だってちゃんとしてたのに、そんなこと言われたら生きたくなっちゃうじゃん、」

「梨華、死ぬって確定した訳じゃないんだろ?死ぬ覚悟なんてまだ早い。信じてよ、未来を、奇跡を梨華自身のことを。俺は梨華と一緒にこれからの人生を歩みたい。梨華、俺と共にこれからの人生を歩んでくれませんか?」

「はい、喜んで」

二人で満月の下、たくさん笑い合いながらたくさん泣いた。

梨華は小さな希望でも信じて、力強く、歩み続けて欲しい、そうしてくれれば俺は充分だったのに。成長すると欲張りになってしまうようだ。今はそれくらいだと満足できなくなってしまった。

これから先の人生は俺の隣で俺と一緒に進み続けて欲しい。

今はそれがたった一つの俺の願い

たった一つなんて少し物足りない気もする。だけど、まだ俺たち二人はこれからの準備段階にようやく辿り着いただけなんだ。まだ始まりに過ぎない。

だから今は、今だけはこれだけでもう充分。