side:葉月 * * *
みんなからしたら、過去の因縁に囚われて、かわいそうな人だと思われているのかもしれない。
大切な人を失って、立ち直れず、人との恋をもう必要としない壊れかけた人間だと。
……でも、貴方に出会う前の私の方が壊れてた。
それだけは確かに言える。
あの時──────……
あなたが人を愛する素敵な心をくれたから、
前を向く方法を教えてくれたから、
別れは悲しいことだけじゃなくて、
新しい明日への一歩だと教えてくれたから。
そして──────………
いつまでも、
心に決めた人を追いかける心をくれたから。
私にとって、貴方はかけがえのない存在。
……私は、貴方の別れを悲しまない。
だって、貴方も悲しんで塞ぎ込むことなんて、望んでいないでしょう?
誰がなんと言おうと、貴方は私の近くにいる。
これを残してくれたのもそうなんでしょう?
私は、ある人のお墓の横で、首にかけていた青い宝石のネックレスを取り外す。
空に掲げると、ギラギラと輝く太陽に反射して、負けないくらい光煌めいている。
……いつ見ても綺麗だわ。この宝石。
本当に、貴方はずるくて、とても優しい人よね。
貴方はただ、この星に変わってしまっただけ。
もう、私は恋をしないと思う。
だって──────私はずっと……
この光り輝く宝石に恋い焦がれているから。
君の笑顔が星に還るまで。[完]