「「……。」」
その通りだったァーっ!!
窓から見える空はもう真っ暗だった。
「……助けに来ませんねぇ。」
「なんでスマホ持ってきてなかったのかしら……。」
はぁ、と頭を抱える先輩。
あれから俺たちはかれこれ二時間くらい閉じ込められており、現在の夜に至る。
時間すらも分からない中、俺たちは閉じ込められていた。
「ねぇ、あそこの窓から出れないの?」
「え、それは危なすぎますって。」
急に何を言い出すかと思えば、身長の二倍はありそうな高さにある窓をよじ登り出す先輩。
「は、ちょ、先輩!!流石にそれは……!!」
おいおい、落ちたらどうすんだよ……!!
ひとまず俺は先輩の真下に立った。
……なんだか、先輩の様子がおかしい。
いつもならこんな行動的なこと起こさないのに、今日はやけに積極的だ。
……そんなに俺といるのが嫌なのかな。
「ッ、あぶね!!」
咄嗟に体が反応して先輩の体を支えようとした時、先輩は手が滑って後ろに倒れてきた。
「うをぉっ……?!!」
ドサドサドサ、っと二人で尻もちを着く。
「先輩、怪我は?!!!」
真っ先に心配が勝った。
良かった、頭は守れた。尻もちは着いたけれど、俺の足のおかげで衝撃は軽減したはずだ。
比較的に守れた。
……けど、
「先輩……?」
俺に背を向けて座り込む先輩の様子がおかしい。
よく見ると、プルプルと肩が震えている。
「え、どこか打って……!!」
そう言って、先輩の肩に手を伸ばした時だった。
パシン
空中で手が弾かれる。
「先、輩……?」
弾いたのは紛れもない先輩。
いつもの調子で軽々しく触らないで、とかいうのだろうか。
本気で俺は先輩を心配してるって言うのに───────。
「っ……。」
それほど、俺の惚れた先輩は状況の読めていない先輩では無かった。
手を弾いた理由は分からないけれど、少なくともなにかに怯えているように、先輩は俺に振り返った。
「先輩……?」
瞳が大きく揺れている。
あの彼女の目が。あんなにもいつも冷たく通常運転だった息が荒れている。
……俺自身に恐怖を抱いているように。
ひたすらに見つめ合う俺たちの時間は、とても長く感じた。
その瞬間、倉庫の鍵がガチャッと開いた。
「……君たち、そこで何をしてるんだい?」
そこに居たのは、警備員の人だった。
不思議そうに今の光景を見つめる警備員。
先輩は、開いた倉庫を見た瞬間、その警備員を押しのけて外に飛び出して行った。
「ちょ、先輩……!!」
俺も、つられて飛び出した。