「─────無理なのよ……ッ!!
      どう足掻いたって、どう藻掻いたって、
   何も……、変わりゃしないの……ッ。」

 月が俺たちの真上に昇った時、俺の恋は終わった。
 
「私だって……ッ、こんなつもりじゃなかったわよ……ッ。」

 ただ泣き崩れる目の前の少女は、
     確かに俺が恋心を寄せていた────
 
密かに咲き乱れる、金木犀ような少女だった。


side:葉月(はづき)    * * *

 
「好きです、付き合ってください……ッ」

 目の前に差し出された手。よく知らない男の子の赤い顔。
 その瞬間、私の頭の中にはデジャブが浮かんできた。
「っ。……ごめんなさい。」 
 私は申し訳なく微笑みながらそういった。
「私、……──────もう、心に決めた人がいるの。」
 自分の胸に手を当てて断った。
 ……あれから、私は成長したかしら。
 こんな場面で思い出すようなことじゃないのかもしれないけど……。
 心の奥底に、大切に仕舞い込んでいた古い記憶が今蘇る。
 いつまで経っても色褪せない、あの素敵な暑い夜の日を──────。