翌朝。目を覚ますと、ベットの上で恵一と一緒に眠っていた。
 一夜だけだったけど、本当に彼と一つになれたような気がした。
 今夜だけだと割り切るはずだったのに、もっともっと大好きになってしまった。
 彼の寝顔を見ながら涙を拭う。

 ごめんね……こんな私で。
 ありがとね……好きで居てくれて。

 由梨香は服を着ると、何も言わずに部屋から出ていく。その際にテーブルにメモを書いて残しておく。

『昨日はありがとう。そしてごめんなさい。あなたとは付き合えません』

 これでいい。彼は、これからサッカー選手としても未来がある。こんなところで、くすぶってはいけない人間だ。
 自分の事は憎んでもいい。忘れて、新しい人生で頑張ってほしい。
 大好きだったよ……恵一。

 その後は、着信を拒否して会わないように心がけた。
 だが、そんな日が続いたある日。彼がアメリカの大会が開戦する八月に自分の身体に異変が送る。体調を崩して大学を休むように。
 吐き気も酷いし、身体もだるい。トイレで吐いた後にフッとカレンダーを見る。

(あれ? そういえば最近来ていない?)

 そこで初めて月経が遅れていることに気づいた。まさか……!?
 だるい身体を何とか叩き起こして、由梨香gは近くのドラックストアに走った。そこで検査薬を買って、急いでアパートに戻ると試してみる。すると陽性だった。
 まさか、恵一の子を身ごもっているなんて。
 昔は、いつか恵一と結ばれて、元気な子供が欲しいと夢を見たことは何度もあった。 
 でも、何で今になって。ゴムはつけていたはずなのに……。
 由梨香が頭を抱えて考え込む。大好きな彼の子だ。