私は昔に心から大切にしていた恋人が居た。
 真鍋由梨香(まなべゆりか)。現在・二十八歳。今年七歳になった息子・恵太(けいた)を育てているシングルマザーだ。
 恵太はサッカーが大好きで、今では少年サッカーチームに在籍している。学校の校庭で元気にボールを追いかけている姿を見ていると、子供の頃の彼の姿を思い出す。
 そう……彼・宮野恵一(みやのけいいち)の事を。


 私と恵一は小学校からの幼馴染みで学年は一つ違い。子供の頃からサッカーが大好きで将来の夢は海外でも活躍するプロのサッカー選手。
 そのため毎日練習して努力してきた。
 由梨香もそんな彼の夢を応援してきた一人だった。
 恵一は東京の大学でサッカーの強豪に推薦入学した。私も片思いの彼を追いかけるように上京。
 努力が実り、若きホープとして注目を浴びるようになる。
 有名なサッカーチームにスカウトされて、プロの道に。才能を開花していく。
 しかし彼が注目を集めるほど、ファンやメディアが放っておかなくなる。会う事もままならず、お忍びで密会するのが精一杯だった。寂しくないと言ったら噓になるけど、それでも大好きな彼のためだと我慢ができた。
 だが、運命とは残酷なものだ。

 彼のチームのマネージャーとスポンサー会社の社長に告げられる。海外チームからもスカウトが来ているが、彼はそれに難色を示しているらしいと。
「どうしてか?」と聞いたら原因は由梨香にあった。
 今でも時間を削って会っている状態なのに、海外となると半年や一年。それ以上に会える回数が減ってしまうだろう。
 幼馴染みの由梨香に、これ以上寂しい思いをさせたくないと言っていると。