中学に上がり、俺は風紀委員になった。
理由は、正しいことをハッキリ言うなら、この立場の方が良いと思ったからだ。
まあ、元々の性格が相待って、あまり融通が利かなかったからか、クラスでは少し嫌われていたが、あの子に胸を張って再会できるようにするためなら、どうでも良いと考えていた。
ある日、4人組の中の1人、柏崎が携帯ゲーム機を持ち込んで使っていた。
それを見かけた俺は、そのグループに近づきゲーム機を取り上げた。
「これは没収する」
「はぁ?なんでですか?」
「校則違反だ、そもそも学校にこんなもの持ってくるな」
柏崎達はいろいろと文句を言っていたが無視した。
この行動に間違いはなかった、当時の自分でもそう思っていた。
俺はそのまま教師の元に預けに向かうその時…
「それくらい良いだろ!!!」
いきなり後ろから柏崎が首を絞めてきた。
「うっ⁈」
驚いた、いきなりこんな行動をするなんて思いもしなかった。
体内の酸素が少なくなる感覚が出てきた。
このままでは、もしものことが起きてしまう、そう感じた俺は柏崎の鳩尾に肘を入れて距離をとった。
「げぼぉ!げぼぉ!」
体内に酸素が戻ってくるのを感じながら、冷静に呼吸を整える。
肘を入れた柏崎は地面にうずくまっていた。
「おい!何をしてるの!」
騒ぎを聞きつけた教師が駆けつけてきた。
「はぁはぁ。柏崎から携帯ゲーム機を没収した時に柏崎が首を絞めてきました。咄嗟のことだったのでうまく対応できず、肘を入れて距離を離しました」
未だ乱れる呼吸を整えながら、教師に状況を説明した。
「わかりました、まずは柏崎くんと君は保健室に行きなさい、話はそれからです」
教師は冷静に指示を出した。
「私は大丈夫です、少し前は呼吸が乱れていましたが、今は落ち着いてます」
「そうですか、でしたらその没収した物を職員室に預けて、そのまま教室に戻りなさい」
俺が保健室に行かなかったのは、柏崎がまた暴れるリスクがあるからだ。
実際、呼吸は落ち着いてるし、それ以外に問題ないので保健室に絶対行かなきゃいけない訳でもないし。
俺はこのまま職員室に行って、クラスでいつも通り授業を受けるだけ、この時の俺はそう思っていた。
自分のクラスに行くといつもと様子がおかしかった。
少しひりついたような空気で居心地が悪い。
「おい、来たぞ」
教室に入った瞬間、ほぼ全員が俺の方を向いた。
その視線は嫌悪に満ち溢れるものだ。
「お前、柏崎に暴力を振るったらしいな」
「は?」
クラスの男子から発した言葉は、先ほどの出来事を曲げたものだった。
「確かに肘を入れたが、それは柏崎がいきなり首を絞めたからであって…」
「言い訳はどうでも良いんだよ、そもそもお前が柏崎から物を取らなければこんなことにはならなかった。だから”お前が悪い”!」
「何を言ってるんだ、そもそも没収した物は学校に持ってきてはいけない物だし、首を絞められて大人しくしてるやつがどこにいるんだ」
湧き上がる怒りを抑えながら、冷静に説明を続けた。
だけど、彼らは聞く耳を持ってくれなかった。
「いつも思うけどあんた何様のつもりなの?校則校則って、そんなに校則が大事?」
「そうだ!そうだ!いっつも上から目線で偉そうに、正直うざいんだよ!!!」
「お前だって、校則違反1つぐらいしたことあるだろ、だったら少しぐらい多めに見てやれよ」
場はどんどんヒートアップする。
あちこちから、「お前が悪い」と聞こえてくる。
場が収まったのは教室に教師が入ってきた時だった。
(俺がやったことは間違いだったのか…?)
だけど、その時俺の頭には疑念しか残らなかった。
それからも俺はクラス全員から嫌味を言われ続けた。
教師からは、柏崎に肘を入れたことについては、状況が状況ということでお咎め無しとなったが、そのことについてもクラスからは、「先生に媚びを売った」などと蔑まれた。
(結局何が正しいんだ)
この時の俺はメンタルがズタズタで、今までやってきたことが、本当に正しいのか疑うようになってしまった。
人の好感度によって、正しくないことでも正しいとなってしまう、正しいことが正しくなくなる、そんな光景を目の当たりにしてしまったから。
(こんなんじゃ、あの子に会えないな)
あの子に胸を張って会うためにしてきたことが、自分の中で本当に胸を張れるものなのか、そう疑ってしまった今の俺には会う資格なんて無い。
それから俺は、人との関わりが怖くなり、人と距離を置いて生活するようになった。
理由は、正しいことをハッキリ言うなら、この立場の方が良いと思ったからだ。
まあ、元々の性格が相待って、あまり融通が利かなかったからか、クラスでは少し嫌われていたが、あの子に胸を張って再会できるようにするためなら、どうでも良いと考えていた。
ある日、4人組の中の1人、柏崎が携帯ゲーム機を持ち込んで使っていた。
それを見かけた俺は、そのグループに近づきゲーム機を取り上げた。
「これは没収する」
「はぁ?なんでですか?」
「校則違反だ、そもそも学校にこんなもの持ってくるな」
柏崎達はいろいろと文句を言っていたが無視した。
この行動に間違いはなかった、当時の自分でもそう思っていた。
俺はそのまま教師の元に預けに向かうその時…
「それくらい良いだろ!!!」
いきなり後ろから柏崎が首を絞めてきた。
「うっ⁈」
驚いた、いきなりこんな行動をするなんて思いもしなかった。
体内の酸素が少なくなる感覚が出てきた。
このままでは、もしものことが起きてしまう、そう感じた俺は柏崎の鳩尾に肘を入れて距離をとった。
「げぼぉ!げぼぉ!」
体内に酸素が戻ってくるのを感じながら、冷静に呼吸を整える。
肘を入れた柏崎は地面にうずくまっていた。
「おい!何をしてるの!」
騒ぎを聞きつけた教師が駆けつけてきた。
「はぁはぁ。柏崎から携帯ゲーム機を没収した時に柏崎が首を絞めてきました。咄嗟のことだったのでうまく対応できず、肘を入れて距離を離しました」
未だ乱れる呼吸を整えながら、教師に状況を説明した。
「わかりました、まずは柏崎くんと君は保健室に行きなさい、話はそれからです」
教師は冷静に指示を出した。
「私は大丈夫です、少し前は呼吸が乱れていましたが、今は落ち着いてます」
「そうですか、でしたらその没収した物を職員室に預けて、そのまま教室に戻りなさい」
俺が保健室に行かなかったのは、柏崎がまた暴れるリスクがあるからだ。
実際、呼吸は落ち着いてるし、それ以外に問題ないので保健室に絶対行かなきゃいけない訳でもないし。
俺はこのまま職員室に行って、クラスでいつも通り授業を受けるだけ、この時の俺はそう思っていた。
自分のクラスに行くといつもと様子がおかしかった。
少しひりついたような空気で居心地が悪い。
「おい、来たぞ」
教室に入った瞬間、ほぼ全員が俺の方を向いた。
その視線は嫌悪に満ち溢れるものだ。
「お前、柏崎に暴力を振るったらしいな」
「は?」
クラスの男子から発した言葉は、先ほどの出来事を曲げたものだった。
「確かに肘を入れたが、それは柏崎がいきなり首を絞めたからであって…」
「言い訳はどうでも良いんだよ、そもそもお前が柏崎から物を取らなければこんなことにはならなかった。だから”お前が悪い”!」
「何を言ってるんだ、そもそも没収した物は学校に持ってきてはいけない物だし、首を絞められて大人しくしてるやつがどこにいるんだ」
湧き上がる怒りを抑えながら、冷静に説明を続けた。
だけど、彼らは聞く耳を持ってくれなかった。
「いつも思うけどあんた何様のつもりなの?校則校則って、そんなに校則が大事?」
「そうだ!そうだ!いっつも上から目線で偉そうに、正直うざいんだよ!!!」
「お前だって、校則違反1つぐらいしたことあるだろ、だったら少しぐらい多めに見てやれよ」
場はどんどんヒートアップする。
あちこちから、「お前が悪い」と聞こえてくる。
場が収まったのは教室に教師が入ってきた時だった。
(俺がやったことは間違いだったのか…?)
だけど、その時俺の頭には疑念しか残らなかった。
それからも俺はクラス全員から嫌味を言われ続けた。
教師からは、柏崎に肘を入れたことについては、状況が状況ということでお咎め無しとなったが、そのことについてもクラスからは、「先生に媚びを売った」などと蔑まれた。
(結局何が正しいんだ)
この時の俺はメンタルがズタズタで、今までやってきたことが、本当に正しいのか疑うようになってしまった。
人の好感度によって、正しくないことでも正しいとなってしまう、正しいことが正しくなくなる、そんな光景を目の当たりにしてしまったから。
(こんなんじゃ、あの子に会えないな)
あの子に胸を張って会うためにしてきたことが、自分の中で本当に胸を張れるものなのか、そう疑ってしまった今の俺には会う資格なんて無い。
それから俺は、人との関わりが怖くなり、人と距離を置いて生活するようになった。
