テストの結果が返ってきた。
そこには全部90点以上のテストたちが並んでいた。
「ま、負けた…」
僕は5教科合計で486点、奏は480点だった。
「結構危なかった。頭良さそうだとは思ってたけど、まさかここまでとは」
「ねぇ全部嫌味にしか聞こえないのは気のせいかしら」
「気のせい、気のせい」
実際奏は頭が良い、この高校に編入する時点で相当頭が良くないと入れない。それに加えて編入して初めてのテストで傾向もわからない中受けてこの点数だ、たぶん次のテストからは勝てないだろう、今回は運良く勝てただけだ。
「悔しい」
「まぁ負けは負けだ、認めろ」
奏はむすっとした表情を浮かべる、反応が面白くて少し揶揄い過ぎてしまった。
「映画行きたかったな…」
そうボソッと奏が呟いた。何故彼女がここまでして映画を一緒に見に行きたかったのかわからない、けど少し寂しそうに見えた。その寂しそうな瞳が少し自分と重なってしまい、気づけば僕は口が動いていた。
「まぁこうやって競うの楽しかったし、映画ぐらいなら付き合ってあげるよ」
「えっ?」
「もともと映画は久々に見に行きたかったしな」
映画自体暇つぶしになるし、最近行ってなかったのは本当なので嘘ではない。
奏は驚いた顔をしていた。きっと僕がこういうことをするとは思っていなかったのだろう。
「どうするの?やめるのか?」
「私が最初にお願いしたのだもの、一緒に行くわ。」
そう問い掛ければ、彼女はそう答えた。
「わかった、見に行く日はまた話そう」
「えぇそうね」
今決めてしまっても良いが、日が落ちる前に帰った方が良いだろう。
冬と言うこともあって外は既にオレンジ一色に染まっていた。
「あの…」
「どうした?」
奏が少し言いづらそうに口を開いた。
「連絡先交換しない?ほら互いに連絡したいことがあればすぐに聞けるし」
「良いよ、確かに交換した方がいいな」
そいえばまだ連絡先を交換していなかったし、あった方がいろいろと都合がいい。
そう思いながら、奏の前に自分の連絡先を表示したスマホを出した。
奏がスマホを出して、連絡先を読み込み交換することができた。
「じゃああとで予定がない日をメールで送ってくれ、
奏の都合に合わせるから」
「別に気を遣わなくてもいいのよ?」
「気を遣っている訳じゃないから安心しろ、ただその方が僕は楽ってだけ」
「そうなのね」
他人に合わせた方がいろいろと早く決まるので楽だ。
問題事が起こることも少ないし、下手に気を遣わせることもない。
「じゃあ今日の夜にメールで送っとくわね」
「よろしくな」
そう言って今日は互いに帰った。