「早瀬……辛かったよな」

 早瀬の細い身体をそっと抱き寄せると、早瀬は俺の背中に腕を回して、「朔月くん……」と涙を流し始める。

「私……死にたく、ないよ……」

「早瀬……俺だって、死んでほしくないよ」

 早瀬と両思いになれたのに、こんな形で早瀬がいなくなってしまうかもしれない、ということに対して……とてもなく、心が痛む。
 両思いで嬉しい反面、悲しさが湧き上がる。

「っ……朔月くん……っ」

 【死にたくない】という彼女の思いが、俺の胸を突き刺す。 彼女が……早瀬が死ぬという現実を、受け入れたくない。

「早瀬……死ぬな」

「っ……私、死ぬのが、怖い……」

 早瀬が死ぬ時、俺は早瀬のそばにいられるのだろうか。……いられるの、だろうか。
 俺は早瀬のそばに、少しでもいたいと、そう思う。 早瀬が安やかに眠れる日が来るなら、少しでも早瀬のそばにいたいと、そう思う。
 
「早瀬……俺は、早瀬には死んでほしくない。 ずっとずっと……生きててほしい」

「朔月、くん……私も、死にたくない……」

 早瀬が生きたい、というその思いが……俺の中に潜り込む。

「早瀬……本当にもう、治療は出来ないのか?」

「……うん、出来ない」

 早瀬は俺に言った。【私にはもう、思い残すことはない】
……と。