「うん……大丈夫。抱いてくれて、ありがとう」

 早瀬が俺の隣で、小さな微笑みを向ける。

「早瀬……本当に、死ぬのか?」

「……死ぬよ、本当に」

 早瀬は俺の隣でベッドに潜りながら、「私のガンね……」と話し出す。

「私のガンね……色んな所に転移しちゃっててね……。もう、治療は出来ないんだ」

「……出来ないのか?治療」

 そんな……。

「もう……何も出来ないよ。薬で治療するのも、もう……出来ないの」

「そんな……」

 早瀬は「私、本当は……朔月くんに会うつもり、なかったんだ」と俺に告げる。

「え……?」

 俺は早瀬の横顔を見つめる。

「でも……死ぬって分かったら、やっぱり朔月くんに会いたくなって……。どうしても……朔月くんに、好きだって、言いたくて……っ」

 早瀬のその悲しそうな表情を見て、俺は「早瀬……泣くな」と早瀬の涙をそっと拭う。

「死ぬ前に……朔月くんに、好きだって言いたかった。言わずに死ぬのは、後悔するって思ったから……。だから、最後に朔月くんに会って……好きだって言いたかった」

 早瀬の思いを聞いて、俺は涙が出そうになった。 早瀬の思いを知って、俺は早瀬に何をしてあげられるだろうか。
 何か、早瀬に対して出来ることが……あるのだろうか。