「なあ、早瀬……本当に死ぬのか?」

「……死ぬよ」

 早瀬には、死んでほしくない。そう思っているのは、事実なんだ。

「朔月くん……最後のお願いなの。 お願いだから、今日だけは、一緒にいてほしい」

 早瀬は「また明日から、私入院するの。……もう、朔月くんには会えなくなるから、今日だけは朔月くんのそばに……好きな人の、そばにいたいの」と泣きそうな目で俺を見る。

「……早瀬、俺でいいの?」

「朔月くんが……いいの。 死ぬ前の最後の思い出にしたいの。……朔月くんとの、最後の思い出を作りたいの」

 そんなことを言われたら、俺は何も言い返せない。だって早瀬は、死ぬって言ってるんだ。
 最後の思い出にしたいと言われたけど、早瀬が死ぬと思うだけで、俺の心は苦しくなる。

「早瀬……俺も、早瀬と一緒にいたい」

「朔月くん……」

「今日だけじゃなくて、俺はこの先もずっと……早瀬のそばにいたいよ」

 早瀬が死ぬなんて、考えられない。……死ぬなんて、信じたくない。

「朔月くん……ありがとう」

「早瀬……今日は、一緒にいよう。早瀬の気の済むまで、一緒にいるから」

 早瀬は「うん……ありがとう」と微笑み、俺の手を握った。

「最後の思い出……作りたい」

「最後とか、言うな」