「朔月くん……」

「もっと……ちゃんと、好きだって言えば良かった」

 今さら後悔しても遅いけど、後悔してしまう。

「店長……俺、情けないです。早瀬に……なんにもしてあげられなかった」

 そんな俺に店長は何も言わず、そっと俺の肩を叩いて俺の前から立ち去った。

「早瀬……」

 あの日が、早瀬に会った最後になってしまった。

「ごめんな……早瀬」

 最後までそばにいられなかった自分を、俺は心底責めた。 
 俺は本当に……バカだな。
 



 それから数日後、早瀬の葬儀が執り行われた。棺桶の中で眠る早瀬の姿は、なんだか幸せそうな表情をしていた。
 きっと早瀬の生きた人生は、幸せだったんだろう。 後悔してるのかしてないのかは、分からないけど……きっと、かけがえのないものになったに違いない。

 本当に早瀬は死んでしまった。 そう思う現実を受け入れるのには、まだ少し時間がかかるけれど。
 俺は早瀬と過ごしたあの日々を、絶対に忘れないからな。 笑った日のことも、一夜を共にしたあの日のことも。
 絶対に忘れないし、忘れたくない。

 俺の心の中には、ずっと楽しそうに笑っている早瀬がいるから。 早瀬の笑顔を思い出せば、俺はきっと前を向けるだろう。
 
「早瀬……大好きだよ」

 俺の好きな人は、ずっと心の中にいるーーー。




【THE END】