「私はもう、朔月くんと両思いになれただけで……それだけでもう、充分だよ」
そんなことを言わないでほしい。……少しでも望みがあるなら、俺は少しでも早瀬のそばにいたい。
「早瀬……俺は、早瀬のそばにいたい」
「……ダメだよ。朔月くんは、幸せにならなきゃ」
幸せに……か。 俺が幸せでいられる瞬間は、早瀬とこうしている時間だけだ。
早瀬のそばにいることが、俺にとっての幸せ、なんだと思う。
「私は……朔月くんのそばには、いられないから……。だから、朔月くんは……私の分まで、幸せになってほしい」
早瀬の言葉を聞いた俺は、「そんなこと、言うなよ……」と、早瀬の涙を拭った。
「早瀬……俺は早瀬のことを好きになって、良かった」
「え……?」
「早瀬のことを好きになれて、良かった」
早瀬のことを好きになれたから、早瀬のことが愛おしいと思えたんだ。
「……私も、好きになれて、良かった」
「早瀬……今日だけだなんて、言うな。 今日だけじゃなくて、死ぬまでずっと……早瀬のそばにいたい」
早瀬が最後まで幸せだと思えるように、俺は最後まで早瀬のそばで笑っていたい。
「っ……イヤだよ……」
「早瀬……?」
早瀬は「私は……もう死ぬから、だから……これは思い出にしてほしい」と俺に告げる。