──────何が好き?
 
『私はフルーツが好きだな〜』
   食べ物はフルーツに限らずおいしいよね。

 
──────何が好き?
 
『スポーツが好きだな。』
   体動かすのは気持ちがいいもんね。

 
──────何が好き?

『本が大好き!』
   知識がたくさん手に入るもんね。
 

     みんながみんな、自分の"好き"を持ってる。
 
────けど、それは人生に置いて必要不可欠なの?

     私には、"好き"がわからない。
 
"好き"って……────────そんなにも必要なものなのかな。

       * * *

 ──────必要なんだよ。
 みんなの目は物語ってた。みんなが目で話してる。
 口元は動いていないのに鋭く、敵対心を抱く視線が突き刺さる。
「あんたさぁ、いつもいつも安全な立場に立ってるけど。……ねぇ、性格悪いよ。」
「前から思ってたんだけどさ、こいつ自分の意見言わないよね。」
「なんだか私たちが馬鹿らしく思えてきちゃう。」
 交わされる会話の中にノイズが混じって、どんどん聴覚が失っていく。
 世界から色彩が消える。何も感じない、何も聞こえない。
 みんなが私から離れていく。
 ……なのに、私の口は意外にもあっさりしていた。失望した微笑みは口元から溢れ出る。
「はは……。"好き"が無くて、何が悪いの……。」
 それが最初で最後の抵抗だった。

      * * *