ヴィアザの背後から鞭が迫り、腕もまとめて身体を締め上げる。
「かかれ!」
 その声とともに三人の男達が、攻撃を放ってきた。
 突きとふたつの斬撃。
 ヴィアザは右胸を刺し貫かれ、右肩と左肩を斬りつけられた。
 予想以上に鞭の拘束が強く、どうしたものかと思っていた。
 ヴィアザは拘束されているのが上半身だけだと分かり、たまたまだが、ひと工夫すれば刀を扱えると判断した。
 ヴィアザは左手に握っていた刀を手離し、左足で柄をそれなりに高く蹴り上げた。
 ぽかんとする男達を見ながら、いったん高々と上がった刀を見つつ、柄を横向きにして口で挟んで受け止めた。
「はあっ!?」
 驚く男達を見ながら、ヴィアザはそのまましゃがんで、首を横に動かした。
 その攻撃は男三人の腹を斬り裂いた。
 身体の向きを変え、鞭を握っている男に刀を突き刺した。
 浅かったかもしれないが、拘束を解かせるには十分すぎるぐらいの、痛手を負わせた。鞭の拘束が解かれた。
「ふう」
 ヴィアザは柄から口を離し、自由になった身体を一瞥しながら、右胸を刺している剣を引き抜いて捨てた。
 腹を斬った三人の男の息の根を止め、怯えきった鞭を持った男の心臓を刺し貫いた。
「動きを止めたのはいいが、甘かったな」
 冷たくヴィアザが言い放った。
「ちくしょう!」
 男が怒り任せに、突っ込んできた。
 右手で手首を捻り上げ、武器を無効化すると、左手の刀で、命を奪った。
 骸をその場に捨て置き、距離をじりじりと詰めてきた男達を一瞥した。
 数多くの傷から鮮血がとめどなく溢れ出していても、ヴィアザの放つ殺気は、その場にいる者達を委縮させるには十分すぎた。
 みな、自分が生きたいがために、躊躇っているように、ヴィアザには見えた。
「動かないのであれば、こちらからいくぞ」
 言いながら、あっという間に男達に近づいて、斬撃を放った。
 一撃で三人の命を奪った。
 傷を負っていてもそれを感じさせない気迫で、次々に男達を、斬り続けた。
 逃げる時間すら与えず、一瞬のうちに命を狩り取っていく。
 ヴィアザの背後には、数多くの骸でいっぱいになった。それでも、彼の動きは止まらない。
 その場にいる者達の命を、容赦なく奪い続けること、約一時間。
 全員を、殺し尽くした。
 セリーナの姿がなかったので、奥に向かったのかもしれないと思った。
 骸をぐちゃぐちゃと踏み潰しながら、元締めと思われる男が入っていた方向に、歩いていった。


 そのころセリーナは、細い道を進んでいた。
 次から次へと出てくる男達を一撃で倒しながら。
 狭かった道が急に広くなった。
 ――いったいどんな構造になっているのかしら。
 そんなことを思いながら、リヴォルバーのグリップを握った。
 前方には十人の男達。
 返り血で汚れてしまったハイヒールを気にしつつ、端から順に心臓に狙いを定めて撃ち続けた。