思った以上に、殴られた右足が痛んだ。
 左膝をついたセリーナは、銃口を老人に向けた。
「わしは、こんなところで、終わらんぞ!」
 はったりだと気づいたセリーナは、狙いを定めた。
 躊躇わずに、最後の一発を撃ち込んだ。
 それは老人の心臓を撃ち抜いた。
 老人の死を(もっ)て、セリーナの長きに渡る復讐は、終わりを迎えた。


「お疲れさん」
「ええ。……ちょっと!?」
「その足じゃ歩けないだろう?」
 ヴィアザは断りもなく、かなり自然にお姫様抱っこした。
「そうだけど……!」
「じっとしていろ」
「あなただって、怪我をしているのに!」
 セリーナは、顔を赤くした。
「よく見ているな」
 ヴィアザは、流石にお前の目は誤魔化せんか、と呟いて苦笑した。
「ちゃんと、分かってるんだからね!」
「歩けるようになるまでの辛抱だ。なに、軽いから心配するな。騒ぎを聞きつけた連中に、絡まれると厄介だ。さっさと出よう」
 セリーナは下ろしてもらうのを諦めて、こくんとうなずいた。
 ヴィアザは怪我を気にすることなく、駆け出した。


 ヴィアザは屋敷を出て、医務院に直行した。
「開けてくれ!」
 ドアを軽く蹴って、声を張った。
「ドアくらい、自分で開けなよ!」
 怒ったニトが出てきて、ヴィアザに抱かれたセリーナを見て、目を丸くした。
「そういう仲になったの?」
「違う。足を怪我した。先に診てくれ」
「そ。分かった。入って」
 ニトはちょっと残念という顔をして、二人を中へ。
 そんな表情を見て、不思議に思ったヴィアザとセリーナだったが、中へ。

 治療室のベッドに、セリーナを座らせ、右足のハイヒールを脱いだ。
「ちょっと失礼するよ。うん、冷やせば大丈夫。ちょっと冷たいよ?」
 二トは言いながら、痣ができた上に腫れている右足を見つめて、湿布を持ってきた。
 湿布をはって、包帯で足を固定した。
「ありがとうございます」
 セリーナは礼を言った。
「痛みが引くまでは歩かない方がいいよ。ハイヒールだと余計にね。なに、念のためだよ」
 ニトはふっと笑った。