隠れ家を出てから十五分ほどで、フィーナス家に辿り着いた。それなりに大きな屋敷で、煌々(こうこう)と明かりがついていた。二人は門番を一撃で殺した。
 騒ぎを聞きつけた男達がわらわらと出てきて、取り囲まれた。
「ここは、任せる」
 その声にセリーナはうなずいた。
 ヴィアザはその場で跳躍した。男達の波を軽々と越えて、屋敷内へと続く扉の近くに降り立った。
 扉を蹴破ると、中へ消えた。
「追え! ……っ!」
 誰かが叫んだが、それを遮るように銃声が響いた。
 近くにいた男が、心臓を撃ち抜かれて倒れた。
「あの男は、ほかの連中がなんとかしてくれる! だから、ここを死守する!」
「あのさ……舐めないで?」
 セリーナはその言葉を聞いて、舌打ちをした。右手に構えたカオドグラルで五回撃った。それと同じ数の悲鳴が上がり、いっせいに倒れた。
 空けていた左手をポーチに突っ込んで、弾丸を五つ込めた。
「ええい! こちらの方が有利だ! かかれっ!」
 セリーナは盛大な溜息を吐いた。
 繰り出された剣をカオドグラルで受け止め、ヴァ=シで心臓を撃ち抜いた。時折蹴りも混ぜながら、右、左と、瞬時に弾を込め、撃ち続けた。
 背後から繰り出された剣を、振り返りもせず、ヴァ=シで受け止める。
 感覚だけで狙いを定め、引き金を引いた。頭を撃ち抜かれた男は、その場に倒れた。
 左右交互に引き金を引くと、四人が倒れた。
 たった一人の敵相手に、男達は確実に圧されていた。
「腹が立つのよね。見た目だけで判断されるのも。数が多いってだけで、傷つけもできないあんたらを見てると」
 セリーナは低い声で言った。その間にも殺戮は続いている。右左とリヴォルバーの弾を込めながら、次々に男達が殺されていく。
「くっ……!」
「ほら。あれだけいたのに、もうあんただけよ?」
 セリーナは言いながら、男に銃口を向けた。
「ち、ちくしょう! おらああっ!」
 追い詰められた男は剣を突き出した。
 が、素早く躱され、腹に弾丸を受けた。
「ぐっ!」
 男は腹を押さえて立ち上がった。
「死になさい」
 セリーナは冷たく告げると、男の心臓を撃ち抜いた。
 数多くの骸が転がる中、それらをハイヒールで踏み潰しながら、屋敷の中へと向かった。


 そのころ、ヴィアザは、次々に出てくる男達を殺す。廊下を突き進んでいた。フードを外して、冷然と(わら)いながら。
 駆け抜けているヴィアザは、よく見れば怪我をしている。勢いでつけられた左胸の斬り傷を、一切気にせず動き続けていた。
 一撃につき一人の命を奪っていく。男達を上回る殺気を放ちながら。
 目前に剣が迫ってきた。がきんっと受け止め弾き返すと、首を正確に斬り裂いた。
 剣は次々に繰り出された。
 まるで無限ループに入ったのかと錯覚するほどに。
 すべての刃を弾き返しながら、確実に頭数を減らしていく。
 返り血が服を汚していくが、足は止めない。
 しばらく殺し続けていたが、男達の波が突然失せた。