「ないわ。そんなもの、とうの昔に斬り捨てたわよ」
セリーナは吐き捨てて、カオドグラルをホルスターから抜いた。
「残念だ」
男が近くに置いてあった槍を手にし、立ち上がった。
「おらっ!」
繰り出された槍をセリーナはひらりと躱した。
「いつまで躱していられるかな?」
セリーナは次々に繰り出される、攻撃を躱し続けた。
その形勢が続くこと、十手。
「っ!」
セリーナが引き金を引く。その弾丸は右肩を撃ち抜いた。
痛みに顔を歪める男を、冷ややかな目で見る。
「これくらいで……!」
「なら、動けなくなるまで、続けるだけよ」
セリーナが低い声で言葉を返すと、数回の発砲音が響いた。
右脚、左腕、腹を撃ち抜いた。
鮮血が滴り落ち、男はおぼつかない足取りになった。
「……甘く見ていた。たまたま、うまく切り抜けてきただけだと思っていたのに。怪我のひとつもできないまま、死ぬしかないのか」
「そういうこと。そこら辺にいる雑魚とは、頭の回転が違うわね?」
セリーナは冷たい目で男を見つめて、引き金を引いた。
それは心臓を撃ち抜き、骸は壁に向かって倒れた。
「……終わったか」
「ええ。あなた、血塗れじゃないの」
「仕方ないだろう」
ヴィアザは骸を踏み潰しながら、入口まで戻った。
もう日が明けており、ヴィアザはすぐにフードを目深に被った。
無言で屋敷を出た二人は、医務院へ向かった。
「入るぞ」
「はいはい」
きたのがヴィアザと分かったのだろう、ニトは苦笑して中に入るように身体を退(ど)けた。
「ちょっと待っていてね」
セリーナはうなずくと、近くにあった椅子に座った。
「あ~あ、本当に酷いな、これ」
ヴィアザは無言でマントとワイシャツを脱いで椅子に座ると、ニトが溜息を吐いた。
「仕方ない。戦場が三つあったからな」
「多すぎない?」
「さてな」
ヴィアザは苦笑し、誤魔化した。
「腹と胸、左肩を先にやるから」
その言葉にヴィアザがうなずいた。
ニトは血を落として、すべての傷を縫った。腹と胸と左肩に薄手の布を当てた。背中まで貫通していたので、そこも布で覆ってしまう。包帯を取り出して手早く上半身を覆うと、端をぎゅっと結んだ。
「あ~、もう。腕も貫かれているんだね」
ニトが言いながら同じように傷を縫ってから布を当てて、包帯を巻きつけた。
「助かった」
ヴィアザは金のコイン一枚を渡した。
「君には生きてもらわなきゃ困るんだよ。五日後、またきて」
ニトの言葉に、ワイシャツとマントを着たヴィアザは苦笑した。
マントを着たヴィアザが戻ってきた。
「大丈夫?」
「それはこっちの台詞だ」
「え?」
セリーナは首をかしげた。
「じゃあな。またくる」
その問いには答えず、ヴィアザは片手を上げて、医務院を出ていってしまった。
セリーナは吐き捨てて、カオドグラルをホルスターから抜いた。
「残念だ」
男が近くに置いてあった槍を手にし、立ち上がった。
「おらっ!」
繰り出された槍をセリーナはひらりと躱した。
「いつまで躱していられるかな?」
セリーナは次々に繰り出される、攻撃を躱し続けた。
その形勢が続くこと、十手。
「っ!」
セリーナが引き金を引く。その弾丸は右肩を撃ち抜いた。
痛みに顔を歪める男を、冷ややかな目で見る。
「これくらいで……!」
「なら、動けなくなるまで、続けるだけよ」
セリーナが低い声で言葉を返すと、数回の発砲音が響いた。
右脚、左腕、腹を撃ち抜いた。
鮮血が滴り落ち、男はおぼつかない足取りになった。
「……甘く見ていた。たまたま、うまく切り抜けてきただけだと思っていたのに。怪我のひとつもできないまま、死ぬしかないのか」
「そういうこと。そこら辺にいる雑魚とは、頭の回転が違うわね?」
セリーナは冷たい目で男を見つめて、引き金を引いた。
それは心臓を撃ち抜き、骸は壁に向かって倒れた。
「……終わったか」
「ええ。あなた、血塗れじゃないの」
「仕方ないだろう」
ヴィアザは骸を踏み潰しながら、入口まで戻った。
もう日が明けており、ヴィアザはすぐにフードを目深に被った。
無言で屋敷を出た二人は、医務院へ向かった。
「入るぞ」
「はいはい」
きたのがヴィアザと分かったのだろう、ニトは苦笑して中に入るように身体を退(ど)けた。
「ちょっと待っていてね」
セリーナはうなずくと、近くにあった椅子に座った。
「あ~あ、本当に酷いな、これ」
ヴィアザは無言でマントとワイシャツを脱いで椅子に座ると、ニトが溜息を吐いた。
「仕方ない。戦場が三つあったからな」
「多すぎない?」
「さてな」
ヴィアザは苦笑し、誤魔化した。
「腹と胸、左肩を先にやるから」
その言葉にヴィアザがうなずいた。
ニトは血を落として、すべての傷を縫った。腹と胸と左肩に薄手の布を当てた。背中まで貫通していたので、そこも布で覆ってしまう。包帯を取り出して手早く上半身を覆うと、端をぎゅっと結んだ。
「あ~、もう。腕も貫かれているんだね」
ニトが言いながら同じように傷を縫ってから布を当てて、包帯を巻きつけた。
「助かった」
ヴィアザは金のコイン一枚を渡した。
「君には生きてもらわなきゃ困るんだよ。五日後、またきて」
ニトの言葉に、ワイシャツとマントを着たヴィアザは苦笑した。
マントを着たヴィアザが戻ってきた。
「大丈夫?」
「それはこっちの台詞だ」
「え?」
セリーナは首をかしげた。
「じゃあな。またくる」
その問いには答えず、ヴィアザは片手を上げて、医務院を出ていってしまった。