「殺しのか?」
「そうだが?」
 ヴィアザは冷たく返した。
「お前らのやっていることは間違っている! 誰も救われないじゃないか!」
「善人のつもりか?」
「僕はこの国の平和を、願っているだけだ!」
「バカバカしい。そんな願いひとつで、この国の闇が消えるわけがないだろう。貴様に言われなくとも、方法が間違っていることくらい、知っている。それにな、俺達は望んでこんなことを、しているんじゃあない。殺し以外の方法でこの国は平和にならない。負の連鎖だということも、分かっている。だが、俺達にはそれしか残されていないんだよ。分かったら、とっとと失せろ」
 ヴィアザは低い声で吐き捨てた。
「お前らの存在を(おおやけ)にして、民に問いかけてやるっ!」
「ダメよこいつは。殺さないと」
 セリーナがカオドグラルを突きつけた。
「話は外で聞いてやる。……俺達の邪魔をしかねない」
 ヴィアザは外へ出た。
 男とセリーナも続いた。

「お前らの正体を突き止めてみせるっ!」
「たった一人……ではないわけか」
 ヴィアザが呟くと家を取り囲むように、武装した連中が物陰から姿を見せた。
「ここで黙らせましょう? こんな連中」
「賛成だ。中途半端な気持ちで、この国の闇に片足を突っ込むな」
 ヴィアザが刀を抜いた。
「平和的な解決が望めないなら、仕方がない。こちらにも手があるっ!」
「なにが、手だよ。貴様自身の手で、やらねぇのか。自分の手だけは汚さないでいる。……はぁ、こんな腰抜け、殺してやるよ」
 溜息を吐いたヴィアザは、男との距離を詰めて、心臓を刺し貫いた。
「があああっ!」
 男は叫んで息絶えた。
「それで、貴様らはどうする?」
「リーダーがいなくなっても、我らには強い意志があるっ!」
「こんなにも、薄っぺらい言葉はないな」
 ヴィアザは嘲笑った。
「ええい、黙れ! 今ここで殺してやるっ!」
「死ぬのは貴様らだ」
 襲い掛かってくる男達を睨み、ヴィアザが吐き捨てた。
「この数相手に、なに言ってんだ!」
「数なんか、関係ないんだよ」
 ヴィアザは言いながら、まずは一人目の男を殺した。少年の依頼で怪我をしていたため、増やすと厄介になるなと思っていた。
「なんでこんなに速いんだっ! たった二人に()されているだと!」
「俺達は誰よりも、殺しに慣れているんでな」
「くっ……!」
「おい、どこへいく?」
 背を向けた男の背後に立ち、ヴィアザが言った。
「ひっ!」
「救援でも呼ぼうとしていたのか? ま、そんなことはさせないが」
 ヴィアザは男の心臓を、背後から刺し貫いた。
 どさりと倒れた骸を一瞥し、身体を反転させた。
「あと三人か」
 ヴィアザは冷笑を浮かべて、駆け出した。


 セリーナは踊るかのように、その場でくるくると回りながら、男達を始末していた。
 一人、また一人と、迷いのない弾丸に撃ち抜かれていく。
 男達の攻撃は当たらないのに、なぜ、攻撃を受けてしまうのか? それが分からないまま、男達はどう攻めたものかと考えていた。
 だが、その間にもほかの連中がやられてしまい、焦りが出てくる。
「考えても無駄よ? あなた達はここで死ぬしかないんだから」
 動きを止めたセリーナがにこりと微笑んだ。
「せめて一人くらいは……っ!」
「だから、無駄だって言ったのに。聞こえなかったの?」
 左手のヴァ=シが火を噴いた。
 心臓を撃ち抜かれた男はばたりと倒れた。
「傷ひとつ負わせられないくせに。殺すだなんて、言わない方がいいわよ?」
 セリーナは言うが早いか、右手のカオドグラルの引き金を二度引いた。
 二人の男が心臓を撃ち抜かれて倒れた。
「終わったわよ。そっちは?」
 骸に視線を向けつつ、セリーナは声を張った。


「あと一人だ」
 ヴィアザは言いながら、最後の男に近づいていく。
 武器も捨て、必死に命乞いをする男を冷ややかに睨んだ。
「腰抜けどもが」
 ヴィアザは心臓を刺し貫いた。
 骸から刀を引き抜くと、鮮血を()ぎ落とした。
 骸を踏み潰しながら、二人はなにごともなかったかのような顔をして立ち去った。