碧央は、結愛がいる廊下の方に近づいてすれ違った。何も言わない。振り返ると

「俺って、どう見える?」

「女たらし?」

「……ふーん、だろうな」

「反論したい?」

「合ってるようで合ってないな……」

 碧央はそう言い残すと後頭部をガリガリかいて、立ち去る。慌てて結愛は声を発した。

「ねえ! 聞いていい?」