夢を見た。家族や友達、恋人から必要とされる夢。
私もしかして、あのまま死んだのかな、これは夢じゃなくて現実なのかな。
意識が朦朧としている中で体を起こし、辺りをじっくり見た。
「起きてたの?良かった、このまま目を覚まさなかったらどうしようかと」
「だ、だれ、誰ですか?ここは?」
「ごめん、ごめん!急に知らない男に話しかけられたら怖いよね!ここはホテルだよ。ちなみに、卑猥なホテルじゃなくてビジネスの方だから!」
ポカンとしている事なんてお構いなしに男性は次から次に話を進めて行く。
「田部涼太です。こう見えてサラリーマンやってます!よろしく!」
「は、はぁ。なるほど」
「君の名前は?」
「中村愛花です。」
「愛花ちゃんさ見たところ高校生だよね?こんな時間まで歩き回ってると危ないよ。親御さんも心配してると思うし、もう帰った方がいいよ。なんだったら、俺が送っていくし」
「いえ、大丈夫です。」
「大丈夫じゃないでしょ!命まで絶とうとしてたみたいだし」
「絶とうとしてません。ただ、夜風にあたりたかっただけです」
相手には嘘だとバレバレだろうが、生い立ちとか知らない人にとやかく言われたくなかった。
「愛花ちゃんがそこまで言い張るなら深くは聞かない。でも家には送らせてほしい。」
「本当に鬱陶しい人ですね。大丈夫って言ってますよね?ほっといてくれません?」
「それは出来ないよ」
他人にここまでお節介焼ける人って珍しいなと思った。
「変な人....」
「えっ?何か言った?」
「いえ、ただ変わり者だなって。こんな私に対して優しくしてくれるなんて。見返りとか求められても何も返せないですよ。」
「見返りが欲しくてやってる訳じゃないよ。ただの、お節介なお兄さんだよ」
彼のくれた言葉と優しい表情は、今まで生きてきた私の人生の中で心に染みる温かさで少しむず痒かった。
「本当に変。きもちわるいよ、おじさん」
「おじさんは酷いよ!愛花ちゃんから見た俺はそう見えるかもしれないけど、世間から見たらこれでも若い方なんだからね!」
「ねえ、さっきの両親の話だけど」
何故だか、この人になら自分のありのままを曝け出せる気がして声を出した。
「うん」
「私ね、両親いないの。父親が事故死してて、母親は他の男の人と家から出て行ったの。だからね、」
隣から鼻をすする音がして、目を向けると何故か話を聞いていた彼が泣いていた。
「いや、おじさん泣く様な内容じゃないから泣くのやめてよ。それに、まだ話始まったばっかりだし」
「ごめん、偽善者みたいだよな。君があまりにも、淡々と話すから。無理しなくていいし、弱さを見せても良いんだよ。」
「見せられる人なんていないよ。どうせ、私なんて誰も見てくれないよ」
「そんな事絶対にない!確かに世の中辛いことだらけで、死にたいと強く思う事の方が多いけど、絶対に君だけを見て、愛して、優しく包み込んでくれて、理解しようと一緒に悩んでくれる人が現れる。俺はそう願ってるし信じてる」
「本当にそう思う?だって、私汚いよ」
「汚くないよ。愛花ちゃんは可愛くて純粋で素敵な女の子だよ」
「おじさん、ありがとう。」
頭の上に置かれた田部さんの大きくて優しい手が、素直じゃなかった私の心の氷を溶かしてくれた気がした。
人生で初めて抱いた恋心だった。だけど....
「おじさん、本当にありがとう。もう平気だよ。」
(貴方から沢山の宝物を貰ったから)
「それなら良かったよ。顔色も大分良いみたいだし」
「うん。おじさんは、もう帰りなよ。奥さんがいる暖かい家に」
「でも、愛花ちゃんはどうするの?」
「私は、一応アパートみたいな所で住んでるから大丈夫だよ」
「それでも、心配だよ」
眉間にシワを寄せて考え出した田部さんを見て思わず笑ってしまった。
曇ってた顔が明るくなり良い事でも閃いた様に無邪気な笑顔を見せてきた。
「うちに住めばいいよ!」
私は、今まで作れなかった笑顔を田部さんに向かって見せた。
「私、自分の力でもう一度やり直したいの!だから、帰って。ね?」
「そっか。愛花ちゃんの軸が決まっているなら俺は何も言える事はないね。ここの部屋のお金は俺が払って帰るから、もう少し体休めてから出ると良いよ」
「うん。ありがとう!」
「じゃあ、また何処かで」
「うん」
彼の優しい背中を最後まで見送り、扉が閉まる音と共に一気に瞳から涙が溢れた。
「好きだよ。涼太さんのこと本当に大好きだったよ」
彼には届かない想いが、次から次へと言葉になって消えていく。
さっきまで彼が座っていたベットのシーツを抱きしめ、声にならない声で愛を吐いていく。
「私だけを見て欲しかった人は、涼太さんだけだったよ」
私は貴方と過ごした今日という夜を一生忘れる事は出来ないだろう。
それでも....
「さようなら」
この言葉を部屋に残して一人、前を向いて歩いた。
私もしかして、あのまま死んだのかな、これは夢じゃなくて現実なのかな。
意識が朦朧としている中で体を起こし、辺りをじっくり見た。
「起きてたの?良かった、このまま目を覚まさなかったらどうしようかと」
「だ、だれ、誰ですか?ここは?」
「ごめん、ごめん!急に知らない男に話しかけられたら怖いよね!ここはホテルだよ。ちなみに、卑猥なホテルじゃなくてビジネスの方だから!」
ポカンとしている事なんてお構いなしに男性は次から次に話を進めて行く。
「田部涼太です。こう見えてサラリーマンやってます!よろしく!」
「は、はぁ。なるほど」
「君の名前は?」
「中村愛花です。」
「愛花ちゃんさ見たところ高校生だよね?こんな時間まで歩き回ってると危ないよ。親御さんも心配してると思うし、もう帰った方がいいよ。なんだったら、俺が送っていくし」
「いえ、大丈夫です。」
「大丈夫じゃないでしょ!命まで絶とうとしてたみたいだし」
「絶とうとしてません。ただ、夜風にあたりたかっただけです」
相手には嘘だとバレバレだろうが、生い立ちとか知らない人にとやかく言われたくなかった。
「愛花ちゃんがそこまで言い張るなら深くは聞かない。でも家には送らせてほしい。」
「本当に鬱陶しい人ですね。大丈夫って言ってますよね?ほっといてくれません?」
「それは出来ないよ」
他人にここまでお節介焼ける人って珍しいなと思った。
「変な人....」
「えっ?何か言った?」
「いえ、ただ変わり者だなって。こんな私に対して優しくしてくれるなんて。見返りとか求められても何も返せないですよ。」
「見返りが欲しくてやってる訳じゃないよ。ただの、お節介なお兄さんだよ」
彼のくれた言葉と優しい表情は、今まで生きてきた私の人生の中で心に染みる温かさで少しむず痒かった。
「本当に変。きもちわるいよ、おじさん」
「おじさんは酷いよ!愛花ちゃんから見た俺はそう見えるかもしれないけど、世間から見たらこれでも若い方なんだからね!」
「ねえ、さっきの両親の話だけど」
何故だか、この人になら自分のありのままを曝け出せる気がして声を出した。
「うん」
「私ね、両親いないの。父親が事故死してて、母親は他の男の人と家から出て行ったの。だからね、」
隣から鼻をすする音がして、目を向けると何故か話を聞いていた彼が泣いていた。
「いや、おじさん泣く様な内容じゃないから泣くのやめてよ。それに、まだ話始まったばっかりだし」
「ごめん、偽善者みたいだよな。君があまりにも、淡々と話すから。無理しなくていいし、弱さを見せても良いんだよ。」
「見せられる人なんていないよ。どうせ、私なんて誰も見てくれないよ」
「そんな事絶対にない!確かに世の中辛いことだらけで、死にたいと強く思う事の方が多いけど、絶対に君だけを見て、愛して、優しく包み込んでくれて、理解しようと一緒に悩んでくれる人が現れる。俺はそう願ってるし信じてる」
「本当にそう思う?だって、私汚いよ」
「汚くないよ。愛花ちゃんは可愛くて純粋で素敵な女の子だよ」
「おじさん、ありがとう。」
頭の上に置かれた田部さんの大きくて優しい手が、素直じゃなかった私の心の氷を溶かしてくれた気がした。
人生で初めて抱いた恋心だった。だけど....
「おじさん、本当にありがとう。もう平気だよ。」
(貴方から沢山の宝物を貰ったから)
「それなら良かったよ。顔色も大分良いみたいだし」
「うん。おじさんは、もう帰りなよ。奥さんがいる暖かい家に」
「でも、愛花ちゃんはどうするの?」
「私は、一応アパートみたいな所で住んでるから大丈夫だよ」
「それでも、心配だよ」
眉間にシワを寄せて考え出した田部さんを見て思わず笑ってしまった。
曇ってた顔が明るくなり良い事でも閃いた様に無邪気な笑顔を見せてきた。
「うちに住めばいいよ!」
私は、今まで作れなかった笑顔を田部さんに向かって見せた。
「私、自分の力でもう一度やり直したいの!だから、帰って。ね?」
「そっか。愛花ちゃんの軸が決まっているなら俺は何も言える事はないね。ここの部屋のお金は俺が払って帰るから、もう少し体休めてから出ると良いよ」
「うん。ありがとう!」
「じゃあ、また何処かで」
「うん」
彼の優しい背中を最後まで見送り、扉が閉まる音と共に一気に瞳から涙が溢れた。
「好きだよ。涼太さんのこと本当に大好きだったよ」
彼には届かない想いが、次から次へと言葉になって消えていく。
さっきまで彼が座っていたベットのシーツを抱きしめ、声にならない声で愛を吐いていく。
「私だけを見て欲しかった人は、涼太さんだけだったよ」
私は貴方と過ごした今日という夜を一生忘れる事は出来ないだろう。
それでも....
「さようなら」
この言葉を部屋に残して一人、前を向いて歩いた。