学校にも行かずに家で引きこもっていたある日のこと、ふとそう思い立って永遠の眠りにつけるよう願いを込めて睡眠薬をたくさん飲んだ。


でも、死ねなかった。



「…久しぶりに、夢を見たよ。私の人生の中で、特別で絶対に忘れることのない幸せなあの夜の夢を。私を心配してたんだろうね。一夜が、夢の中で会いにきてくれた」



左手の薬指にはまっていた雫の指輪をそっと指でなぞる。



「一夜がいないこの世界で生きる理由なんてわからないけど、それでも私は生きるよ。だって一夜が、生きてって私に言ったから」


「亜芽…」



これでいいんだよね、一夜?


またねって言ってくれた一夜を、生きてこの世界で待ち続けるよ。


もう一度君と出会うその日まで…。



まるで私に答えるかのように、雫の指輪がきらりと光った気がした。