こんなの誰だって呆れるし、嫌いになる。



「もう泣くなって。そうだよな、亜芽のこと喜ばせることばっかで頭いっぱいで、不安にさせてたなんて気づかなかった」



一夜は優しく笑うと、ジャケットの袖でそっと涙を拭ってくれた。



「俺は、偶然亜芽と出会ったなんて思ってないよ。きっとあの時出会ってなくても、いつ出会ったとしても俺は亜芽に惹かれてたと思うから。俺たちが出会ったのは、運命だから」



一夜が私の手を取ると、左手の薬指に指輪をはめてくれた。



「これからも亜芽とずっと一緒にいたい。いつか本物をあげるその時まで、今はこれで我慢して」



きらりと光った雫が、雨上がりの空のようにきれいで、一夜の想いが幸せなくらいに伝わってきた。



「嬉しい…ありがとう。私もずっとずっと一夜と一緒にいたい」



私はこの夜を絶対に忘れない。そう直感的に思った。