土埃がゆっくりとはれて、辺りが鮮明になる。
ロゼッタ「ーーっ……」
一瞬、何が起こったのか……ロゼッタは状況が理解出来ずにその場に座り込んでいる。
ロゼッタの側には甲冑を身に纏った人物がいて、辺りが鮮明になると静かにその場から立ち去る。
ロゼッタ「……あっ……」
慌てて、ロゼッタはその背中に向かって叫ぶ。
ロゼッタ「ありがとうっ!」
甲冑の人物「……」
甲冑を身に纏った人物はロゼッタの言葉に返答することもまして、振り返ることせずに去りゆく。
ロゼッタは徐々に小さくなっていくその背中を瞳を輝かせながら見つめていた……。
ロゼッタ(あの時……私は決めたんだーー……)
時は経ち……9年後。
所々に背の高い草がうっそうと生えている草原の中央で大量の魔物(ゴブリン)が2人の人間ー剣士のロゼッタと魔法使いのレイを取り囲んでいる。
ロゼッタは剣を使い、レイは魔法を放ち、それぞれ目の前にいるゴブリンを1体ずつ確実に倒していくも……あまりの数の多さに徐々にロゼッタは苛立ちが募り、ついついぼやく……。
ロゼッタ「もー! 一体、なんなのよっ!?」
レイ「キレない、キレない」
ロゼッタ「これがキレずにいられる!? 情報屋にガセネタばっか掴まされた挙げ句……今度は大量のゴブリンに襲われるなんて聞いてないっ!!」
レイ「一言も言ってませんもの」
ロゼッタ「ーーっ……」
レイ「『いい情報があるよ』と、情報屋が言いながら差し出した地図を目にした途端……それ以上、詳しいこと何一つ確認せずにさっさと情報料を払ってお店を飛び出してしまいましたものね」
さらりと、柔らかな微笑みを浮かべながら言葉を紡ぐレイに対して、ロゼッタはバツが悪くなるも……苛立ちが消えたわけではないので、口調は荒っぽいまま言葉を言い放つ……。
ロゼッタ「レイ!! 冷静に言わないでっ!! そういうこと言ってほしくて言ったんじゃなくて……」
レイ「はい、はい。分かってますよ。ロゼにとってこの状況は想定外……どうするのって、ことですよね」
ロゼッタ「ーーっ……!」
ニコッと、レイはロゼッタに笑いかける。
ロゼッタ「……わっ……分かってるじゃない」
レイ「何年、側にいると思ってるんですか」
レイの言葉にロゼッタは嬉しくもあり、また恥ずかしくもあった……。
そんな複雑な感情にロゼッタは戸惑い、ほんの一瞬言葉に詰まる……。
ロゼッタ「……っ……」
レイ「まぁ……この場合、地道に一体ずつ倒していくのが懸命ですね」
ロゼッタ「……やっぱ、そうよね……」
レイ「はい。これも洗礼だと思って」
ロゼッタ「はぁ!? なに、それ……洗礼……って」
レイ「新人に対する洗礼ですよ。『今の力に驕ることなく、精進していけ……そうでなければ、己の目的は果たせぬ……』と、いう意味が込められて……」
レイが言葉を言い終わらぬ内にロゼッタが言葉を重ねて、ハッキリと言う。
ロゼッタ「ないっ! それは絶対にないっ!!」
レイ「そう……ですか?」
ロゼッタ「そうよ。どんだけいいように考えてんのよっ!! これはただのいじわる。新人いびりもいいとこよっ!!」
レイ「……何もそこまで言わなくても……」
ロゼッタがそう思ってしまうのも分からなくはないレイは少々困り顔でロゼッタをチラリと見やる……。
ロゼッタ「……っ……」
ロゼッタ(……そうよ、そうに決まってる。だって……)
不意にロゼッタの顔色が曇り、剣先が鈍る……。
ロゼッタの変化に素早く気がついたレイはすかさずロゼッタの名前を呼ぶ。
レイ「ロゼ!」
レイの声にロゼッタはハッと、我に返る。
レイ「暗い顔しないっ! らしくないですよ!」
ロゼッタ「……っ……」
レイ「こんなことでへこたれるような人じゃないはず!!」
ロゼッタ「……レイ……」
レイ「そうですよね?」
ゴブリンを攻撃する手は緩めずにレイは強い瞳でロゼッタを見つめる。
その瞳にロゼッタは自身を叱咤する。
ロゼッタ(……そうだよ……こんなことで……っ!)
一時的にロゼッタの戦力が落ち、ゴブリン達に追い詰められそうになっていたが、レイの一言でゆっくりと押し返す。
しかし……徐々に2人の体力がつきはじめ、じわじわとゴブリン達に追い詰められてゆく……。
ロゼッタ「……くっ……」
レイ「……っ……」
ロゼッタ(……ここ、までなの……?)
ロゼッタは唇を噛みしめる……。
さらにゴブリン達との距離が狭まっていき、苦悶の表情を浮かべる2人。
その時ーー……。
ロゼッタ「ーーっ……」
一瞬、何が起こったのか……ロゼッタは状況が理解出来ずにその場に座り込んでいる。
ロゼッタの側には甲冑を身に纏った人物がいて、辺りが鮮明になると静かにその場から立ち去る。
ロゼッタ「……あっ……」
慌てて、ロゼッタはその背中に向かって叫ぶ。
ロゼッタ「ありがとうっ!」
甲冑の人物「……」
甲冑を身に纏った人物はロゼッタの言葉に返答することもまして、振り返ることせずに去りゆく。
ロゼッタは徐々に小さくなっていくその背中を瞳を輝かせながら見つめていた……。
ロゼッタ(あの時……私は決めたんだーー……)
時は経ち……9年後。
所々に背の高い草がうっそうと生えている草原の中央で大量の魔物(ゴブリン)が2人の人間ー剣士のロゼッタと魔法使いのレイを取り囲んでいる。
ロゼッタは剣を使い、レイは魔法を放ち、それぞれ目の前にいるゴブリンを1体ずつ確実に倒していくも……あまりの数の多さに徐々にロゼッタは苛立ちが募り、ついついぼやく……。
ロゼッタ「もー! 一体、なんなのよっ!?」
レイ「キレない、キレない」
ロゼッタ「これがキレずにいられる!? 情報屋にガセネタばっか掴まされた挙げ句……今度は大量のゴブリンに襲われるなんて聞いてないっ!!」
レイ「一言も言ってませんもの」
ロゼッタ「ーーっ……」
レイ「『いい情報があるよ』と、情報屋が言いながら差し出した地図を目にした途端……それ以上、詳しいこと何一つ確認せずにさっさと情報料を払ってお店を飛び出してしまいましたものね」
さらりと、柔らかな微笑みを浮かべながら言葉を紡ぐレイに対して、ロゼッタはバツが悪くなるも……苛立ちが消えたわけではないので、口調は荒っぽいまま言葉を言い放つ……。
ロゼッタ「レイ!! 冷静に言わないでっ!! そういうこと言ってほしくて言ったんじゃなくて……」
レイ「はい、はい。分かってますよ。ロゼにとってこの状況は想定外……どうするのって、ことですよね」
ロゼッタ「ーーっ……!」
ニコッと、レイはロゼッタに笑いかける。
ロゼッタ「……わっ……分かってるじゃない」
レイ「何年、側にいると思ってるんですか」
レイの言葉にロゼッタは嬉しくもあり、また恥ずかしくもあった……。
そんな複雑な感情にロゼッタは戸惑い、ほんの一瞬言葉に詰まる……。
ロゼッタ「……っ……」
レイ「まぁ……この場合、地道に一体ずつ倒していくのが懸命ですね」
ロゼッタ「……やっぱ、そうよね……」
レイ「はい。これも洗礼だと思って」
ロゼッタ「はぁ!? なに、それ……洗礼……って」
レイ「新人に対する洗礼ですよ。『今の力に驕ることなく、精進していけ……そうでなければ、己の目的は果たせぬ……』と、いう意味が込められて……」
レイが言葉を言い終わらぬ内にロゼッタが言葉を重ねて、ハッキリと言う。
ロゼッタ「ないっ! それは絶対にないっ!!」
レイ「そう……ですか?」
ロゼッタ「そうよ。どんだけいいように考えてんのよっ!! これはただのいじわる。新人いびりもいいとこよっ!!」
レイ「……何もそこまで言わなくても……」
ロゼッタがそう思ってしまうのも分からなくはないレイは少々困り顔でロゼッタをチラリと見やる……。
ロゼッタ「……っ……」
ロゼッタ(……そうよ、そうに決まってる。だって……)
不意にロゼッタの顔色が曇り、剣先が鈍る……。
ロゼッタの変化に素早く気がついたレイはすかさずロゼッタの名前を呼ぶ。
レイ「ロゼ!」
レイの声にロゼッタはハッと、我に返る。
レイ「暗い顔しないっ! らしくないですよ!」
ロゼッタ「……っ……」
レイ「こんなことでへこたれるような人じゃないはず!!」
ロゼッタ「……レイ……」
レイ「そうですよね?」
ゴブリンを攻撃する手は緩めずにレイは強い瞳でロゼッタを見つめる。
その瞳にロゼッタは自身を叱咤する。
ロゼッタ(……そうだよ……こんなことで……っ!)
一時的にロゼッタの戦力が落ち、ゴブリン達に追い詰められそうになっていたが、レイの一言でゆっくりと押し返す。
しかし……徐々に2人の体力がつきはじめ、じわじわとゴブリン達に追い詰められてゆく……。
ロゼッタ「……くっ……」
レイ「……っ……」
ロゼッタ(……ここ、までなの……?)
ロゼッタは唇を噛みしめる……。
さらにゴブリン達との距離が狭まっていき、苦悶の表情を浮かべる2人。
その時ーー……。