昨日の洞窟探検によって、ゴーレム錬成に必要な素材はすべて揃った。
魔石は家の倉庫にいくつもある。体に素材も同様だ。ゴーレム液は採取したばかりのペルロ草とエーテル純水を錬成板で一つにすれば完成する。
素材採取から帰ってきたルタスはエルフに報告があるらしく、しばらく帰ってこないらしい。なんか最近忙しいみたいだけど何も話してくれないので理由は不明だ。錬金術で何か作れと言われているのかもしれないが、俺には関係なさそうなので今日はゴーレム作りをする。
さて、さっそく作業に入ろう。
まずはエーテルをたっぷり含んだ水を大きなフラスコに入れて火にかけ、沸騰するまでの間にペルロ草を丁寧にすりつぶしていく。鮮度が大事なので手早く済ます。青臭さが部屋全体に広がったが気にはならない。もともと薬品っぽい臭いが充満しているし、前世から慣れているからな。
竈の方を見ると水がぐつぐつと泡を立てていた。煙は白い。不純物が取り除かれた証拠だ。
火を消して冷ましている間に錬成板を床におく。二つの素材しか錬成できない品だけど、ゴーレム作りはこれで充分だ。上の円にペルロ草をすりつぶした水が入った皿を、下の円にエーテル純水、中心の円には空のフラスコを設置した。
「素材のセットよし、エーテル含有量よし、錬成後の受け皿の設置よし、問題ないな」
初めてだから声を出し、指さし確認した。
準備はちゃんとできている。よし行くぞ!
手に少し汗をかいている。初めて作るゴーレム液を一人で準備したから緊張しているようだ。心臓をバクバクさせながら錬成板に触れ、魔力を流す。文字、模様、円といった順番で光り出した。
何度見ても飽きない。綺麗な光景に目を奪われながらも、中心の円にあるフラスコを見る。
緑色の液体が湧き出ていた。これがゴーレム液だ。
上下の円におかれた素材が消えると完成である。
フラスコを持つとすぐにコルクで栓をする。これで不純物の侵入が阻止でき、劣化速度を遅らせて五年ほど保存できるようになるのだ。
ゴーレム液を作業台に置いて倉庫へ行くと、魔方陣が刻まれた魔石を持つ。続いて体の素材を選ぶべきなんだけど……悩むな。倉庫には岩、鉄、ミスリル銀の三つがあって、どれにしようか悩む。成人男性と同じぐらいのサイズを作ろうとしたら、そこそこの量を使ってしまうのでミスリル銀はさすがに止めておこう。大量に使ったら父親にしかられそうだからな。
最初はありふれた岩にする選択もあるけど、初号とは特別な存在である。岩ぐらいのランクじゃ俺が納得できない。
怒られるのを覚悟してミスリル銀を使うか?
最終手段としてはあり、だろうが結論を出すのは早い。他に良い物がないか倉庫を漁ってみよう。
薬草や食料をどかしながら、ゴーレムの体に使えそうな素材を探す。皮はさすがに無理だろう。猪の骨か。軽く叩いてみると軽い音がした。中は空洞のようで強度は低そうだ。やっぱりミスリル銀を……って、骨か。そういえばドラゴンらしきヤツの心当たりがあるな。
大きくて持って来られなかったけど、現地で錬成すれば作れそうな気がする。
けど森の中は迷いやすくて、一人で辿り着ける自信がない。サリーがいつ来てくれるか分からないし、待っているのは精神的に辛い。俺は今日、作りたいのだ。明日なんて嫌だ。
他の素材を……って、そうだ! 俺は鱗を持ち帰っていた!
バッグに入りきらなかったから、サリーのカゴも使わせてもらったので人間ぐらいのサイズなら余裕で作れる。素材は余るだろう。
白い鱗は一つが大人の手のひらより少し大きい程度で軽かったけど、叩けば硬い感触が返ってくるので、防御面は問題ない。
でも、それだけじゃ普通だ。特別ならもう一ひねりしたい。
錬金術は複数の素材を錬成して新しい物質を作ることが得意だ。ドラゴンの鱗とミスリル銀で新しい鉱石を作ろう。
さっそく錬成板の上下に素材を置く。最適な分量が分からないので鱗10%、ミスリル銀90%の割合から鱗90%、ミスリル銀10%の割合まで5%刻みで少量を用意、錬成してみる。
その結果は目の前にあって鱗の割合が多いと白っぽい。爪で削るとポロポロと削れるほど脆くなっていた。ゴーレムとして動かすだけで摩耗しそうだ。元の素材よりも柔らかいなんて面白いな。そしてミスリル銀の割合が多いと白いけど光沢のある金属っぽい素材になっていて、叩くと軽い音はするが硬い。
「ドラゴンの鱗よりミスリル銀を多めにしよう。そっちの方が鉱石っぽい」
手に取ったのは、鱗の割合が30%~5%までの鉱石である。この中から選んだ方が良さそうだ。他は失敗作として捨てる。
ミスリル銀の特性を引き継いでいるのであれば、魔力を込めると変質するはず。
試しに軽く流し込んでみると急に重くなって落としてしまった。叩けばさらに硬い感触。倉庫にある鉄塊で叩いてみてもびくともしないどころか、鉄塊が割れてしまった。鱗の割合が20%以上だと強度は変わらないように思える。このぐらいの硬さがあればゴーレム素材として使っても摩耗することはないだろう。戦闘にも使えそうだ。
続いて試すのは魔法の耐久度だ。
外に出て複数の鉱石を的にくくりつけてから、初級魔法の『アイスアロー』を何度もぶつける。さらに覚えたての中級魔法である『ファイヤーボール』まで使ってみたけど、どれも傷一つ残ってなかった。俺はエーテルへの干渉能力が高いらしく、中級魔法なら上級ぐらいの威力があるはずなのに形が残っているのだ。鉄なら吹き飛んでいるぞ。
これは物理よりも魔法に対して高い耐性を持っているのかもしれない。これは素材となったドラゴンの鱗の特性だろうな。両方の素材の良い部分を引き継いだ新素材が完成したと思って良いだろう。
「素晴らしい! これは使える……ッ!」
的からはずした新素材――スケイル銀鉱石を掲げながら小躍りをしてしまった。
思いつきだったけど初号機に使える物質をいきなり錬成してしまった俺は、意外と才能があるのかもしれない。
あまりミスリル銀は使いたくなかったので鱗の割合が20%の物を採用して錬成、ゴーレムの体に使う素材をすべて揃えた。
あとは魔石に魔方陣を刻めば終わりだ!
魔石は家の倉庫にいくつもある。体に素材も同様だ。ゴーレム液は採取したばかりのペルロ草とエーテル純水を錬成板で一つにすれば完成する。
素材採取から帰ってきたルタスはエルフに報告があるらしく、しばらく帰ってこないらしい。なんか最近忙しいみたいだけど何も話してくれないので理由は不明だ。錬金術で何か作れと言われているのかもしれないが、俺には関係なさそうなので今日はゴーレム作りをする。
さて、さっそく作業に入ろう。
まずはエーテルをたっぷり含んだ水を大きなフラスコに入れて火にかけ、沸騰するまでの間にペルロ草を丁寧にすりつぶしていく。鮮度が大事なので手早く済ます。青臭さが部屋全体に広がったが気にはならない。もともと薬品っぽい臭いが充満しているし、前世から慣れているからな。
竈の方を見ると水がぐつぐつと泡を立てていた。煙は白い。不純物が取り除かれた証拠だ。
火を消して冷ましている間に錬成板を床におく。二つの素材しか錬成できない品だけど、ゴーレム作りはこれで充分だ。上の円にペルロ草をすりつぶした水が入った皿を、下の円にエーテル純水、中心の円には空のフラスコを設置した。
「素材のセットよし、エーテル含有量よし、錬成後の受け皿の設置よし、問題ないな」
初めてだから声を出し、指さし確認した。
準備はちゃんとできている。よし行くぞ!
手に少し汗をかいている。初めて作るゴーレム液を一人で準備したから緊張しているようだ。心臓をバクバクさせながら錬成板に触れ、魔力を流す。文字、模様、円といった順番で光り出した。
何度見ても飽きない。綺麗な光景に目を奪われながらも、中心の円にあるフラスコを見る。
緑色の液体が湧き出ていた。これがゴーレム液だ。
上下の円におかれた素材が消えると完成である。
フラスコを持つとすぐにコルクで栓をする。これで不純物の侵入が阻止でき、劣化速度を遅らせて五年ほど保存できるようになるのだ。
ゴーレム液を作業台に置いて倉庫へ行くと、魔方陣が刻まれた魔石を持つ。続いて体の素材を選ぶべきなんだけど……悩むな。倉庫には岩、鉄、ミスリル銀の三つがあって、どれにしようか悩む。成人男性と同じぐらいのサイズを作ろうとしたら、そこそこの量を使ってしまうのでミスリル銀はさすがに止めておこう。大量に使ったら父親にしかられそうだからな。
最初はありふれた岩にする選択もあるけど、初号とは特別な存在である。岩ぐらいのランクじゃ俺が納得できない。
怒られるのを覚悟してミスリル銀を使うか?
最終手段としてはあり、だろうが結論を出すのは早い。他に良い物がないか倉庫を漁ってみよう。
薬草や食料をどかしながら、ゴーレムの体に使えそうな素材を探す。皮はさすがに無理だろう。猪の骨か。軽く叩いてみると軽い音がした。中は空洞のようで強度は低そうだ。やっぱりミスリル銀を……って、骨か。そういえばドラゴンらしきヤツの心当たりがあるな。
大きくて持って来られなかったけど、現地で錬成すれば作れそうな気がする。
けど森の中は迷いやすくて、一人で辿り着ける自信がない。サリーがいつ来てくれるか分からないし、待っているのは精神的に辛い。俺は今日、作りたいのだ。明日なんて嫌だ。
他の素材を……って、そうだ! 俺は鱗を持ち帰っていた!
バッグに入りきらなかったから、サリーのカゴも使わせてもらったので人間ぐらいのサイズなら余裕で作れる。素材は余るだろう。
白い鱗は一つが大人の手のひらより少し大きい程度で軽かったけど、叩けば硬い感触が返ってくるので、防御面は問題ない。
でも、それだけじゃ普通だ。特別ならもう一ひねりしたい。
錬金術は複数の素材を錬成して新しい物質を作ることが得意だ。ドラゴンの鱗とミスリル銀で新しい鉱石を作ろう。
さっそく錬成板の上下に素材を置く。最適な分量が分からないので鱗10%、ミスリル銀90%の割合から鱗90%、ミスリル銀10%の割合まで5%刻みで少量を用意、錬成してみる。
その結果は目の前にあって鱗の割合が多いと白っぽい。爪で削るとポロポロと削れるほど脆くなっていた。ゴーレムとして動かすだけで摩耗しそうだ。元の素材よりも柔らかいなんて面白いな。そしてミスリル銀の割合が多いと白いけど光沢のある金属っぽい素材になっていて、叩くと軽い音はするが硬い。
「ドラゴンの鱗よりミスリル銀を多めにしよう。そっちの方が鉱石っぽい」
手に取ったのは、鱗の割合が30%~5%までの鉱石である。この中から選んだ方が良さそうだ。他は失敗作として捨てる。
ミスリル銀の特性を引き継いでいるのであれば、魔力を込めると変質するはず。
試しに軽く流し込んでみると急に重くなって落としてしまった。叩けばさらに硬い感触。倉庫にある鉄塊で叩いてみてもびくともしないどころか、鉄塊が割れてしまった。鱗の割合が20%以上だと強度は変わらないように思える。このぐらいの硬さがあればゴーレム素材として使っても摩耗することはないだろう。戦闘にも使えそうだ。
続いて試すのは魔法の耐久度だ。
外に出て複数の鉱石を的にくくりつけてから、初級魔法の『アイスアロー』を何度もぶつける。さらに覚えたての中級魔法である『ファイヤーボール』まで使ってみたけど、どれも傷一つ残ってなかった。俺はエーテルへの干渉能力が高いらしく、中級魔法なら上級ぐらいの威力があるはずなのに形が残っているのだ。鉄なら吹き飛んでいるぞ。
これは物理よりも魔法に対して高い耐性を持っているのかもしれない。これは素材となったドラゴンの鱗の特性だろうな。両方の素材の良い部分を引き継いだ新素材が完成したと思って良いだろう。
「素晴らしい! これは使える……ッ!」
的からはずした新素材――スケイル銀鉱石を掲げながら小躍りをしてしまった。
思いつきだったけど初号機に使える物質をいきなり錬成してしまった俺は、意外と才能があるのかもしれない。
あまりミスリル銀は使いたくなかったので鱗の割合が20%の物を採用して錬成、ゴーレムの体に使う素材をすべて揃えた。
あとは魔石に魔方陣を刻めば終わりだ!


