にらみ合う僕と国王。周囲の有象無象はさっきの大臣もろとも、僕の威圧を受けて一歩だって動けやしていない。
さすがは国王っていうのかなー。目の前の玉座に座ってるおじさんだけは平然としてるけど、それはそれとして放っていたカリスマは完全に呑み込んだ。
カリスマ、威圧、その他オーラとかそういう、対象を圧倒する気迫。そういうののぶつかり合いは結局のところどちらか強いほうが弱いほうを呑み込むようになっているんだ。
つまりはこの場合、一冒険者にすぎない、しかも子供である僕の気迫に一国の王が、国の頂点たる権威とやらが地力で負けてるってことになるんだ。
痛快だね。
僕はニヤリと笑って、国王へと告げた。
「エウリデ王。僕はお前なんかになんの権威も感じやしない」
「…………貴様は」
「お前は偉くなんかない。お前達は偉くなんかない。偉い生き方をしてないんだ、偉いはずがない。たかが生まれがどうのこうので偉い偉くないなんて、そんなの決まるもんか」
過去、出会ってきたいろんな人達を思い返す。
孤児院の先代院長。その後を継いだミホコさん。レイア、ウェルドナーさんはじめ調査戦隊のみんな。ベルアニーさん、リリーさん。
ケルヴィンくん、セルシスくん。サクラさん、シアンさん、オーランドくん、マーテルさん。
ヤミくん、ヒカリちゃん。レオンくん、ノノさん、マナちゃん。その他町の人達、冒険者のみんな。
誰もがそれぞれの立場や生き方があって、それぞれのやり方で生きていて、それぞれに必死なんだ。それはもちろん僕も含めてね。
そして、だからこそ言えることがある。つまり王族だとか貴族だとかは、それそのものが偉いことでは決してないんだ。
どんな立場であれ、偉い人と偉くない人がいて、こいつらは……国王だとか大臣だとかなんてのは、こんなんじゃ偉くもなんともない連中なんだよ。
人間らしい生き方をしてきた数年間の中で、得た答えを語る。帽子を脱いで顔を晒せば、さしもの国王も見覚えがあるのか眉を微かに動かすのが見えた。
「人を生まれ育ちだけで見下して、莫迦にして、苦しめて。頑張ることの凄さも、報われないことの辛さも、救われないことの苦しみも理解しない、寄り添うこともしない。そんなお前達が偉いわけないだろ」
「貴様、その顔……見たことあるぞ。たしか、下民の中でも殊更に賤しい、スラムの虫。調査戦隊に紛れ込んだ、生ゴミか」
「3年ぶりだね愚かな王様。王族に生まれただけで、他の何より自分は偉いと勘違いした哀れなヒト」
ここまで言われてなお見下すことを止めない、その姿勢はいっそ清々しいまであるけどどこまでも愚かだ。
仮にこいつらが、人に対して分け隔てなく接し、どんな身分、立場の人間にも手を差し伸べる心根を持っていたなら、仮に敵対するとしても僕だって敬意を払うくらいはしただろうに。
虫けらに何を言われても動じないということだろう、エウリデ国王は無表情のまま相変わらず僕を見下してくるばかりだ。
ただ大臣や他の貴族連中は違う。この部屋の中には政に関わる連中らしいのが何人もいるけど、いずれも僕の一連の発言が心底気に入らないみたいだ。
視線で人を殺せそうな目で睨んできて、あまつさえこの期に及んでキャンキャンと吠えてきていた。
「不遜……不遜! 不敵、不出来、不快、不愉快! なんたることか、これほどの屈辱、侮辱は初めてだ!!」
「衛兵、始末しろ! いますぐそこな虫けらを刺殺し、切り刻み、あらゆる肉片をスラムに投げ捨ててしまえ!!」
「我ら至尊なる血の流れるエウリデ貴族をなんと心得る!」
ああ、ああ。うるさいなあ、イラッと来るよー。
兵士にまで命令して僕を殺そうとしてるみたいだけど、残念ながらその兵士まで含めて全員僕の威圧にやられて動けやしないんだ。
むしろその状態でよくまあここまで叫べると変に感心するよー。ここまでのことになるのは初めてだろうから、イマイチピンと来てないのかな? 自分達が今、窮地に陥ってるってことを。
……まあいい、と僕はため息を吐いた。
つい苛立ちマックスでいきり立っちゃったけど、一応ながら流れってのは大切だ。ましてまだ、形の上でも交渉しようかーって感じだしねー。
シアン団長を見て、僕は言った。この場を預かる冒険者は、僕でなく彼女であるべきさ。
「ぐちゃぐちゃ言ってないで良いから本題に入るよ……団長。ここまでやらかしといてなんだけど交渉自体はお任せするよ。僕が矢面に立つと、口より先に手が出る」
「そうですね……そのほうがいいでしょう、お互いのためにも」
「ごめんね」
「いえ。貴族の一員として、むしろ申しわけなく思いますから」
僕の独断専行に苦い顔を見せつつ、しかし最後にはどこか吹っ切れた笑顔を見せて団長は立ち上がった。
しゃしゃり出ちゃった僕のターンはこれで終わりだ。さあ、次にお前達を倒すのは僕らの団長だよ、エウリデ。
さすがは国王っていうのかなー。目の前の玉座に座ってるおじさんだけは平然としてるけど、それはそれとして放っていたカリスマは完全に呑み込んだ。
カリスマ、威圧、その他オーラとかそういう、対象を圧倒する気迫。そういうののぶつかり合いは結局のところどちらか強いほうが弱いほうを呑み込むようになっているんだ。
つまりはこの場合、一冒険者にすぎない、しかも子供である僕の気迫に一国の王が、国の頂点たる権威とやらが地力で負けてるってことになるんだ。
痛快だね。
僕はニヤリと笑って、国王へと告げた。
「エウリデ王。僕はお前なんかになんの権威も感じやしない」
「…………貴様は」
「お前は偉くなんかない。お前達は偉くなんかない。偉い生き方をしてないんだ、偉いはずがない。たかが生まれがどうのこうので偉い偉くないなんて、そんなの決まるもんか」
過去、出会ってきたいろんな人達を思い返す。
孤児院の先代院長。その後を継いだミホコさん。レイア、ウェルドナーさんはじめ調査戦隊のみんな。ベルアニーさん、リリーさん。
ケルヴィンくん、セルシスくん。サクラさん、シアンさん、オーランドくん、マーテルさん。
ヤミくん、ヒカリちゃん。レオンくん、ノノさん、マナちゃん。その他町の人達、冒険者のみんな。
誰もがそれぞれの立場や生き方があって、それぞれのやり方で生きていて、それぞれに必死なんだ。それはもちろん僕も含めてね。
そして、だからこそ言えることがある。つまり王族だとか貴族だとかは、それそのものが偉いことでは決してないんだ。
どんな立場であれ、偉い人と偉くない人がいて、こいつらは……国王だとか大臣だとかなんてのは、こんなんじゃ偉くもなんともない連中なんだよ。
人間らしい生き方をしてきた数年間の中で、得た答えを語る。帽子を脱いで顔を晒せば、さしもの国王も見覚えがあるのか眉を微かに動かすのが見えた。
「人を生まれ育ちだけで見下して、莫迦にして、苦しめて。頑張ることの凄さも、報われないことの辛さも、救われないことの苦しみも理解しない、寄り添うこともしない。そんなお前達が偉いわけないだろ」
「貴様、その顔……見たことあるぞ。たしか、下民の中でも殊更に賤しい、スラムの虫。調査戦隊に紛れ込んだ、生ゴミか」
「3年ぶりだね愚かな王様。王族に生まれただけで、他の何より自分は偉いと勘違いした哀れなヒト」
ここまで言われてなお見下すことを止めない、その姿勢はいっそ清々しいまであるけどどこまでも愚かだ。
仮にこいつらが、人に対して分け隔てなく接し、どんな身分、立場の人間にも手を差し伸べる心根を持っていたなら、仮に敵対するとしても僕だって敬意を払うくらいはしただろうに。
虫けらに何を言われても動じないということだろう、エウリデ国王は無表情のまま相変わらず僕を見下してくるばかりだ。
ただ大臣や他の貴族連中は違う。この部屋の中には政に関わる連中らしいのが何人もいるけど、いずれも僕の一連の発言が心底気に入らないみたいだ。
視線で人を殺せそうな目で睨んできて、あまつさえこの期に及んでキャンキャンと吠えてきていた。
「不遜……不遜! 不敵、不出来、不快、不愉快! なんたることか、これほどの屈辱、侮辱は初めてだ!!」
「衛兵、始末しろ! いますぐそこな虫けらを刺殺し、切り刻み、あらゆる肉片をスラムに投げ捨ててしまえ!!」
「我ら至尊なる血の流れるエウリデ貴族をなんと心得る!」
ああ、ああ。うるさいなあ、イラッと来るよー。
兵士にまで命令して僕を殺そうとしてるみたいだけど、残念ながらその兵士まで含めて全員僕の威圧にやられて動けやしないんだ。
むしろその状態でよくまあここまで叫べると変に感心するよー。ここまでのことになるのは初めてだろうから、イマイチピンと来てないのかな? 自分達が今、窮地に陥ってるってことを。
……まあいい、と僕はため息を吐いた。
つい苛立ちマックスでいきり立っちゃったけど、一応ながら流れってのは大切だ。ましてまだ、形の上でも交渉しようかーって感じだしねー。
シアン団長を見て、僕は言った。この場を預かる冒険者は、僕でなく彼女であるべきさ。
「ぐちゃぐちゃ言ってないで良いから本題に入るよ……団長。ここまでやらかしといてなんだけど交渉自体はお任せするよ。僕が矢面に立つと、口より先に手が出る」
「そうですね……そのほうがいいでしょう、お互いのためにも」
「ごめんね」
「いえ。貴族の一員として、むしろ申しわけなく思いますから」
僕の独断専行に苦い顔を見せつつ、しかし最後にはどこか吹っ切れた笑顔を見せて団長は立ち上がった。
しゃしゃり出ちゃった僕のターンはこれで終わりだ。さあ、次にお前達を倒すのは僕らの団長だよ、エウリデ。