日曜日。たまきは関本と遊ぶ約束をしていた。

 といっても、いつも通り、麺類食べ歩きにつきあってもらうだけだ。たまきも関本も、お小遣いはすべて、この食べ歩きに全突っ込みしていた。

 騒がしい広場にある、生き物のような、そうでもないような、不思議なオブジェの前。先に待っていた関本の前にたまきが現れた。

「今日はどこ行く?」

 関本はつまんなさそうに、ポケットに手を突っ込みながら、たまきの顔をのぞき込んだ。

「んー……。パスタかな」

「パスタ? って、え? パスタ? いいの? あれ、すするやつじゃないよ?」

 関本は聞く耳を疑うように、俯きがちのたまきをさらに下からのぞきこむようにすると、そこにはどんよりとした暗い顔があった。

「今は、すすりたい気分じゃないんだ」

 実際には、たまきがまともにすすれた試しはない。

「たまきがそう言うならいいけど……」

「ごめん、関本はすすりたい気分だよね」

「いや、別に、すすりたい気分とか、そういうのはないけど。パスタでも問題ないよ」

 関本的にはパスタでも何ら問題はない。本音を言うなら、特別麺類が好きだというわけでもない。ただ、たまきにつきあっているだけだ。

 たまきの方は勝手に、関本と麺類愛好同盟を結んでいるとでも思っていそうだけど。

「どこでもいいよ。関本、店決めてよ」

 投げやりなたまきに、関本は困惑した。

 いつもはすする系ばかりだから、突然パスタの提案をされても、当てがない。

 関本はしばらく思案していたが、ふいに思いつき、スマホの液晶画面に指を滑らした。 



 不思議なオブジェ前の喧騒を離れ、関本がたまきを連れて行ったのは、そこから徒歩十二分ほどのところにある、赤と白の配色が洒落た店だった。

「へえ、こんなところに、こんなかわいいお店があったんだね」

 店の前に立ったたまきは建物を見渡した。「イタリアン?」

「ちがう。洋食屋さん。入ってみよ」

「ほう、洋食屋。パスタなんてあるのかな……、ってねえ! 置いて行かないでよ!」

 関本はたまきを置いて、入口のドアに手をかけていた。